第6話 蒼き瞳
キルド王国、王都バリンズからセフォルド城の方を見る美しい蒼きその瞳。シル・フィールズは王都を護衛する勇ましいガイバス近衛隊の行進を見ていた。この王都よりもよりふさわしいとされるバルドアの街の
"支配者"【リディク・バガロウド卿】
ことをふと考えていた。
「あれがガイバス近衞隊のロッジス隊長」
彼女はその蒼い目で行進の先頭にいるロッジスを見ている。王都は賑わっていた。
そもそもガイバス近衛隊とは
【エロア近衛隊】【バッカス近衛隊】が表の存在ならば国王セフォルドの直下部隊でありあの秘密結社レボックの一人 それこそがハメル・ロッジスその人なのだ。
もともと青い目をしているシル・フィールズという少女。とはいってももう17になる。彼女の半生はまさに激動と戦いそのものだった。
3年前 ミクジュラスの街
ゴルド王国、その西部の町【ミクジュラス】その郊外には修道院がある。ゴルド王国はキルド王国の東に位置する山岳国家。ミクジュラスの街はそれほど大きな町ではないがその市はとても賑わっている。今日は陽気がいい。市の外れにはサーカスが催されいつも以上に活気にあふれている。
しかし、平和な様子は怒号と未明でかき消されようとしていた。
「おーい、いるのは判っているんだ。我ら蛇の目様ダァ!!!」
そこに現れたのは召喚魔獣を率いた 通称【蛇の目】と呼ばれる組織だった。
市は大混乱に陥て住民の血が流され始めている。サーカスのテント付近にまで妖獣の部隊が迫っていた。これを清教徒たちが黙ってみているはずがなかった。
「大変だ 蛇の目の奴らじゃないですか!」
「あいつらの好きにはさせない。」
蒼き眼の少女たちそれは兵僧として名高い修道院の女性、いや、修道女達がそこにはいた。少女とは言っても年齢はかなり離れていて幼い6,7歳の年のころから成人しているものまでいた。
テントの外では召還魔獣がすでに殺戮を始めている。何人もの亡骸の少し離れたところに市場からサーカスのテントに戻ろうとしていた数人の修道女がいた。
「奴らめ」
「なんだ君たちは」
蛇の目 リーダー格の名はリゲルという。その男はこれまでどれだけの人を殺めてきたことか。その非道なる性格はこのレパントの世界中に知れ渡っていて、このゴルド王国に来たのはかなり久しぶりでもうもうこの国には来ないと思われていた。
その彼らがこのゴルドにいるという事実だけでも少女は鬱陶しいというのに今日はついていない。寄りにも寄って最大のライバルがこの町にもう一人来ていた。
「これはこれは、ミクジュラス修道院の連中かいな!ワシじゃよワシ」
それは言わずと知れた ガマのばあさん もとい キャンデ婆
「あんたこそ、私の戦果を横取りする気!!!」
「そんな 卑屈にならんでもなぁ、なあ ゴルドの竜の子よ!」
私は竜の子という言葉が一番気に食わないのを知りながら唱えてしまった。
「ガマのはばぁが!! 私がやつを殺る」
そんなやり取りを傍で聞いている蛇の目の連中の気持ちも穏やかではなかった。
「何言ってやがる!! くそ婆と修道女に何ができる!!!」
そう意気込んで見たものの召喚獣のゴブリンを修道女が剣で瞬殺し、くそばばぁは魔法陣を展開し始めた。
「げぇぇぇぇぇっっっ、これはガマの婆だ!!
そして、この女 なんて奴らだ!!!!!!」
リゲルと子弟の女がいるのだがその女はすでに逃げようとしていた。
「てめぇ、何してやがる!くそに逃げじゃねぇよ!!」
そうこうしているうちに召喚獣たちは魔法陣と修道女の剣によってばらばらにされている。
「なんていうことだ ミクジュラス修道院の兵僧じゃねーか」
もう一人の蛇の目の男がそう言ったタイミングで
「雑魚じゃねーか たかがレベル20程度の召喚獣如きを送り込むんじゃねーよ」と
修道女たちは斬撃を加え続け悲鳴に満ちていた広場と市場はあっという間に平和を取り戻しつつあった。
「我々の力をこの程度と思うなよ! 天よ地よ、うめけ いかれ我が召還セ氏門よ開け!!!」
広場はにわかに緊張が走り空は曇り暗雲が垂れ込み寒気と冷風と突如として雷と稲妻が走り一般の客が数人が時空に吸い込まれだした。
{こいつはまずい 揶揄い過ぎたワイ!}
キャンデばあさんも聞いていないという表情になった。そう、地獄の門の償還である。
「やばいわね、【地獄の門】よ、どうする シル!!!」
修道女たちは少し慌て始めた。こんなレベル1000の門を召還出来るなんて聞いていないしこれを破壊できるのだろうか?
しかし、キャンデばあさんは何を思ったのか魔法陣を展開し直して こう言い放った。
「あはははっっっっっ、これは、これは地獄の門じゃの!!」
なぜ笑った、とここにいる当事者たちはほとんどが思ったに違いない。市場の客、平場の客、サーカスの客、そして、修道女たちは門がゆっくりと開くのを嵐のような強風の中、見ていた。
その横に巨大な魔法陣も出現し、これは「世の果てだ」とつぶやいたり、「きゃゃゃゃゃゃゃ」と叫ぶ声がしたりと大変だ。
「この魔法陣 これは、・・・・・・・」
キャンデばばぁの姉、私の師匠である レプノスが一度だけ見せたことがある魔法
『大決壊』である。
魔法ではくらべものにはならないと悟った蛇の目は
「くそ、これは命がいくつあっても足りないぜ」
と啖呵を切りながら別の魔法陣を作り、ワープ輪を作り逃げ始めた。
「まて、このくそ野郎」と
ガマのばあさんのいうことを尻目に
「まあ、お相子様ね」と涼しい顔でシル言った。
グローズ・ファイア 蒼き炎編 ハイド博士 @mazuki64
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