16 王都防衛戦8 ソーサラー対決
王都防衛軍の正面に、魔軍の
闇のエルフ、アニヤークはそれをくぐった。
少女と、
今ここに、
アニヤークはまぶしそうに手をかざすが、戦車の前にふらりと進む。
「おまえか〜この魔法。
おじさんがカンカンに怒って早く––––。
いきなり少女は手を開く。
だがコーディリアも。
「
時が、ゆっくり流れてみえた。
アニヤークの手から暗黒の霧が舞い、戦車の上のコーディリアへ向かう。
だが霧は
が、彼女は左右に目をやり発した。
「読めた!
とたん
筋は集まり再び一つとなった暗黒の霧が、アニヤークを襲う。
少女は血相を変えて両手を合わせ、突く。
「
指先で黒い霧は左右に分かれ、
光の幕の向こうで
暗黒の霧は、数百年分の命を
返された闇の魔法は、アニヤークの
汗ばむアニヤークは、こわごわ指を見る。
中指の先が、
ふり返ることなく少女は、赤目を上げる。
とんがり帽を
その頃、魔軍の背後の岩山。
幻影が
「あいつだ! なんでここに?」とアカネが叫び、「長くはもたん」とバールももらす。
マルコが引きつった顔で二人をなだめた。
アルは、青い
「気づいたよね。その子はほぼ無詠唱だ。
大丈夫。グリーの
それを聞いたコーディリアは、周りが危険だと思った。
戦車から
と同時に、またも闇のエルフが手のひらを返す。
「
前に東の果てでアカネを固めた氷、つまり水の魔法。
だが唇が動く間に、魔女は唱えることができた。
「
宙に
着地した彼女をバリバリバリッ! と氷がおおい、止まった。
が次の瞬間、地面から大量の
かたや、
「うぁあああっ!」と少女が叫ぶ間に、芽は枝となり
アニヤークはすかさず詠唱。
「
炎が少女の腕で
やがて、赤黒い左腕をゆらし、闇のエルフが立ち上がる。
乱れた白金の髪の下で、歯ぎしりする。
闇のエルフは初めて恐怖を感じ、唇が震え出した。
岩山では、うってかわって大歓声。
「リアさんすごい!」と、マルコがバールとアカネの肩を組む。
しかし、アルの
「そろそろ……限界だよね?」
青い
アルは思う。
壮大な防魔の術をかけたまま、
アルの目が鋭くなり、
「
コーディリアははっとした。
目の前でふらつく少女にそれを使うのか。
探究者の冷酷な強さに驚く。
「アル……残酷なのね」
そうつぶやくとしかし、魔女は目を閉じ、詠唱をはじめた。
相手がつぶやき出して、アニヤークは発狂しそうだ。
こんなの聞いてない。
白い石、王都グリーの
決定的な呪術で、逃げなければ。
そう考え少女は、ふと思いつく。
地上にない埋もれた魔法。敵の心を、闇に
そうして、両の手のひらを向けた。
「
だがしかし、視界に闇が落ちたのは、アニヤークの方だった。
◇
真の暗闇で、アニヤークはほっとした。
途中は思い出せないが、安全な地中へ逃げられたのだ。そう思った。
だが、わずかに疑問がわいた時、左にあの魔女があらわれる。
「
アニヤークは狂って叫び、
敵をつらぬき、紫の光を放って消えた。
だがつららは戻り、少女は驚いてよけた。
すると今度は、背後に魔女があらわれる。
「
アニヤークは泣きながらふり返り、敵の足元を割った。
魔女は落ち、赤い光を残して消えた。
しかし少女の心も沈み、髪をかきむしる。
さらに左に、それがあらわれた。
「
アニヤークは揺れる瞳を向ける。
やっとわかった。
少女は今、閉じ込められているのだ。
◇
岩山に浮かぶ幻影を見て、マルコは不思議だった。
「あの子……どうしちゃったの?」
幻影が
恐怖に
「
アルはうなづいた。
「そう。彼女の心を闇の牢獄に入れたんだ。
危険だから……リアにそうしてもらった」
それを聞くと、仲間は少し哀しげな顔で、遠くを見つめた。
ふと、バールが顔を上げる。
「あれは……?」
マルコも天にかかる
空に浮かぶいくつもの紫の光。
それとぼんやりした雲が渦巻き、巨大な、天を抜くほど巨大な、人の形が浮かびあがっていた。
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