9 戦いの上(じょう)
裏山の中腹の空き地。
雨のすじとグリーの白い明かりでできた、光の幕の向こう。
「シューッ……スーッ……」と呼吸するような音と、ズズッ……ズズッと重たいものを引きずる音が近づいて来る。
「ひいぃっ!」
ダニオはあわてて口を手でおさえたが、恐怖の悲鳴がもれ出た。
光の幕を抜け、ゆっくりあらわれる。
右手で大きな何かを引きずっている。
しかし、マルコとアルとゴードンの三人はある一点に目を奪われていた。
ダニオはひざまづいたまま、
青年団の面々も固まったように動けず、目だけはその姿を追っていた。
顔に雨があたり、
「マルコ、非常時の作戦! 貴公が指揮を。
……アル! 打ち合わせ通りだな?」
「……あぁ、そうだ。頼むよ……マルコ」
呆然と
だがしかし、マルコは、緊張をほぐそうと
それを見た面々、アル、ゴードン、ダニオ、そして恐慌寸前だった青年団も、ふっと口もとがゆるみ気持ちがほっとした。
それに気づかぬマルコは、
「では非常時の作戦! ゴーディは青年団の誘導! その後、後方支援!
アルは
僕は……マリスの男を足止めする」
◇
雨天にのびる、人の背丈ほどある巨大な剣が、真っ二つにしようとマルコにふり下ろされた。
「スーッ」と
左に。マルコはよけていた。
剣はぬかるんだ地面に刺さり泥が跳ねる。
「早くはない」とマルコは思う。だが、死んだように落ち
一撃もらうと、あとはない。
左へ左へと回り込み、様子をうかがう。
「あの大剣を、
ゴードンが鋭い目で
そのうしろには、退避に従わないダニオがいる。彼はマルコの戦いを見届けようとし、なんとか恐怖心をおさえながらも、震えた。
アルは、
何度目だろうか。大剣が泥に刺さった。
とっさにマルコは、木製盾をかまえてしまった。
「ダメだ」と彼は思い、大剣が盾を
よく通る声が響く。
「
銀の光が、マルコの盾をおおう。
高速の大剣がグァンッ! と音をたて
剣を手に、
素早くマルコは踏み込んで、茶色の布きれがのぞく脇下へ剣をふり切る!
「やった!」
ダニオが叫んだ。
アルの手もとで、
切り抜けたマルコがふり返ると、
あわててマルコが小剣を上げると、切っ先には、ほんのわずかに黒い血がついているだけだ。
彼は、剣の刃を
◇
「
「……あとひとつ。だけど……今はまだ」
ゴードンの問いかけに、アルはうつろに答えた。そしてアルは、息をするのも苦しそうに見えた。
ゴードンが対決に目を向けると、
あの
マルコは「考えろ、考えろ」と念じながら敵の攻撃をよける。彼は疲れ切っていたが、相手はそうは見えなかった。
両手で持ち上げられた、巨大な剣がまたも襲い来る。
マルコはまたも左によける。大剣が泥をはね上げた時、マルコは仕掛けた。
体重をかけ、全力で
変えようとする
大剣は
瞬間、ねじった体からハート・ブレーカーの刃が繰り出され、
黒い血が、雨の中へ吹き散った。
即座に体は反転し、銀の盾先が
屈服するかのように
ずぶ
◇
グアアアアアアアアァァァァッッ!
背筋を
ひときわ小柄なロッコは、むせび泣きはじめた。彼は、ここまでついてきた事を、心の底から後悔していた。
やがて、誰かの声があがる。
「……おい、見ろ。あれは、何だ?」
ロッコも顔をあげた。そして彼は、後悔の気持ちが、絶望へと変わった。
◇
アルは雨空を見上げていた。手に持つ杖の神の善意の石グリーの光が、
彼は、
「岩のごとく、固い意志……。だけど、時には頑固もの……」
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