20 宮殿遺跡の対決 前編
マルコとアルの前で、扉が少しづつ開く。
神の善意グリーにてらされ、
そして、大量の
その者たちはいっせいにこちらを見るが、みなキョトンとした表情だ。
マルコが見上げると、石柱のはりにも大勢の
その数に圧倒されて、マルコは思わず声が震えた。
「あ……アル? ど、どうすんのさ。これ」
「大丈夫……彼らのことは任せて」
アルは落ち着いて答えると、
あわててマルコも背中についていった。
とたん、
息苦しいほど広間を満たす騒音に、マルコは両手で耳をふさぐ。
あの
アルの口が動く。
杖の先のグリーが
すかさずアルは、広間中にひびく
「聞け! 地から生まれし一族よ!
たとえ神の悪意、マリスに
この神の善意、グリーの光が
去れ! 一族が生まれ
さもなくば、
そう叫ぶと、アルはふり返った。
「目を閉じて!」とマルコにささやき片目をつぶる。
マルコは、言うことをきいた。
杖先から、白い雲のような
すると、広間中に昼の光が満ちた。
目を閉じるマルコは、何も見なかった。
だが、幾百もの手足があわてて床や柱をこする、砂嵐のような音を聞いた。
そして閉じた
◇
マルコがそろそろと目を開くと、広間は、きれいに
グリーの光がてらす先へ目を
マルコは、最悪の危機は乗りきったと興奮し、高揚してアルに目をやる。
しかし、広間の奥にたたずむアルの横顔はさえない。
彼は何かに気づくと、その一点をじっと見つめるままだ。
「あったよ、マルコ。……あれだ」
マルコも駆け寄り、アルが見つめる先を、同じようにながめる。
わずかに光が届く広間の奥に、
◇
グリーの明かりがなければ、真の暗闇であろう大広間。
奥の
玉座のうしろの壁には、
マルコとアルが
王冠の真ん中には宝石がはめられている。
はじめマルコは、その宝石がグリーの光を反射しているものだと、てっきりそう思っていた。
「マルコ……ちょっと……待って」
アルは息をするのも苦しげに、マルコの肩に手をやる。
マルコは彼の顔を見上げると、もう口に出さずにはいられなかった。
「アル……ほっぺたに、
背を丸めたアルの顔に、黒く
アルは息を切らして答える。
「……ああ……これ?
体質というか、血筋というか……。
いまは、気にしなくて大丈夫……」
苦しげになんとかそう答え、アルは玉座に目を向ける。
「……最悪だ」
マルコが見ると、壁に巨大な人影がゆらめていた。
背もたれの
はるかに大きい屈強な
赤い目を開き、大きな赤い口をニタリ、とさせると王冠の石に指を伸ばす。
「遅かった……もう、
そうつぶやくと、アルの体は
あわててマルコが支え、アルの手を
腕の先から赤黒い
切っ先はまるで、
片腕だけがいびつに巨大な
「……ダメだ。計画は失敗だ……。
逃げよう、マルコ」
アルは目を開き、がたがたと震えている。
だがマルコは、静かにアルの前に出ると、落ち着いて答えた。
「あとは、僕に任せて。アルは下がって」
その時マルコは、やっと答えにたどり着いたと思ったのだ。
セバスティアンの、いまマルコが着るこの
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