白い箱
ゆでたま男
1
男は、大変大事そうに両手でその箱を抱えていた 。
それは、ちょうど腰から胸のあたりまでの大きさほどだった。
真白く正方形で、下の角に黒いシミのようなものがついていた。
その男は、ふと気が付いた時には私の向かいに座 ていたため
どこから乗ってきたのかはわからなかった 。
黒いスーツに黒いハットをかぶっており、細身だが肩幅が広くがっしりしていた。
私はなぜだか分からないが、無性にその箱の中身が気になってきた 。
「その箱には何が入っているのですか?」
そう尋ねると
「なあに、大したものではありませんよ」
と、男は箱に視線を落とした。
そう言われると、余計にその中身が気になって仕方がない。
「いいじゃないですか、見せてください」
男は薄笑いを浮かべた 。
「では、少しだけ覗いてみますか?」
「はい」
男は、箱の正面をこちらに向けて蓋を少し開けた。私は首を伸ばしたが
暗くてよく見えなかったので、腰を浮かせて覗き込んだ。
と、その瞬間全身から血の気が引いた。そこには人の首が入っていたのだ。
その首は目を閉じていたが、ゆくり瞼を上げた。
そして私と目が合うなり微笑を浮かべた。
それは、まぎれもなく私自身の首であった 。
白い箱 ゆでたま男 @real_thing1123
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