時空に関するいくつかの考察

いありきうらか

時空に関するいくつかの考察

時空とは何だろう。よく言葉として耳にするが、はっきりと意味はわからない。

百科事典で調べても難しい言葉で表現されていて、結局よくわからない。

時空という言葉を分解して、じっくりと考えてみよう。


「時は空」

時は流れていく雲のようだ。風に流されどこかへ行ってしまう。

過ぎ去った雲は二度と帰ってこない。一つとして同じ雲は存在しない。

過ぎた時間は二度と帰ってこない。一つとして同じ時間を過ごす人間はいない。

そう、時空とは人生そのものなのである。


いや、わからない。


「時も空」

時ってさ、目には見えないよね?目に見えないってさ、透明ってことだよね?

透明ってさ、白Tシャツに水をかけた状態だよね?白Tシャツに水をかけた状態ってさ、男の夢だよね?

男の夢ってさ、秘密基地だよね?秘密基地ってさ、ロマンだよね?

ロマンってさ、ドラフト1位の野球選手だよね?ドラフト1位の野球選手ってさ、まだまだ青いよね?

青いってさ、空だよね?

そういう意味では巡り巡って、時も空だよね?


いや、わからない。


「時と空」


「どうもー、時です」

「空です」

「時と空で時空です、よろしくお願いします」

「いやー時くん」

「どうしたんだい、空くん」

「最近、時空について考えていてね」

「僕らのことを真剣に考えてくれていますね」

「違うよ、そっちの時空じゃなくて、本物の時空の方だよ」

「何を言っているんだ、僕らだって本物の時空じゃないか」

「違うよ、あっちが本物の時空だよ、僕らは紛い物さ」

「絶対おかしいよ、僕たちが本物の時空になろう」

「どういうことだい」

「本物の時空をぶっ飛ばして、俺たちが本物の時空になってやるのさ」

「でも、どうやって時空なんてぶっ飛ばすんだい」

「…え、どうしようかな」

「な?」

「…え?」

「だから俺も時空について考えていたんだよ」

「あ、空くんも時空をぶっ飛ばそうと考えていたんだね」


いや、わからない。

正直、僕は序盤で気づいていた、これは間違っていると。


「時で空」

まずは、時間を中火で10分煮こみます。煮込んでおいた時間がこちらになります。

このように時間は煮込むと透明になります。煮込みすぎると黒くなりますので、注意しましょう。

続いて、この時間に塩コショウとごま油を加えます。量はお好みで調節してください。

これを丸めてラップで包み、1時間冷蔵庫で冷やします。冷やしたものがこちらになります。

綺麗な空が完成しました。


いや、わからない。

私は少し疲れている。しかし、思考を止めるわけにはいかない。


「時空(ときそら)」


「ひいふうみいよおいつむうななやあ、蕎麦屋さん、今何時だい?」

「へえ四つで」

「いつむうなな…」


いや、わからない。

そもそもこれは時そばだ。


「時空(ときそら)」

「時空(ときそら)」は、〇〇著のケータイ小説であり、2011年に書籍化、2012年には映画化された。

学校を舞台とした物語が中高生の支持を集めた。物語の舞台は、東京であり、作者の出身地でもある。


いや、わからない。

私は完全に迷子になっている。もう1度、「時空(じくう)」というものをじっくり考える。


「時の空」

私は、時の空を飛んでいる。この世界には、漫画のイメージのような変形した時計は存在しない。

重力は存在せず、かといって無重力でもない。

しかし、確実に、私の体はある方向へ向かっていくのだ。

それは私の力でもあるし、川の流れのように、強制的なものでもある。

抗おうと思えば抗えるが、不思議とそうさせない力が全身にかかっている。

景色としては宇宙が最も近いが、決して宇宙という言葉では表現できない。

そもそも空と表現するのが間違いかもしれない。

ここには足を着ける地面が存在しておらず、私は確実に浮遊している。

空、空間、世界、次元、存在、概念、想像。

私にとっては世界という言葉が一番ふさわしく感じる。

コップの中に残った液体を無差別に混ぜ込んだような世界。

しかし、何一つ濁ってはいない世界。

そんな世界を飛んでいると、横に一羽のトキがいた。

(断じて駄洒落などではない、本当に飛んでいたのだからしょうがないではないか)

トキは世界の流れに逆らおうとしている。

もしかしたら、トキにとっては、この流れは、痛みを伴うものなのかもしれない。

私はこの世界を何一つ理解していない。

ただ私は、この居心地のいい流れに身を任せることにしよう。


いや、わからない。


ああ、あれも違う。これも違う。

何十周、何百周と「時空」のことを頭の中で循環させている。


そんなことをしていると、体が随分と衰えてきたような気がするのう。

なんと、「時空」のことを考えているうちに、いつの間にか老人になってしまったようじゃ。

なるほど、これが「時空」のようじゃ。

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時空に関するいくつかの考察 いありきうらか @iarikiuraka

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