農家は機械人形?
時が早い
それは農作物や家畜など、食料生産を支える異界。
速界によって時が過ぎる速度は異なる。
ある速界の一時間は
生き物の成長速度が相対的に早くなり、それが第一次産業を豊かにする。
その反面、速界で活動する農家などが急速に老化する問題を抱えていた。
強制的な労働を強いられた事例を問題視した者が権力者に存在した時代、速界の使用を禁止された。
その後、機械技術、人工知能の発達によって、速界を用いた第一次産業は再び活発に成る。
それは、短期間で大量の木材や食材など生産した結果、常界で行われていた農業や林業、畜産業が大打撃を受けた。
今、常界で残っているそれらの産業は高品質な製品の生産者や常界の環境で無ければ生産が難しい製品などが殆どである。
仕事ではなく、趣味で動物や植物を育てている人々は基本的に常界を用いている。
第一次産業を除いた速界の活用法に、何かを熟成させる用途がある。
異界の広さや環境はその異界ごとに異なっている事から、育てる動植物や熟成させる物に応じて、使い分けている。
常界に近い自然豊かな異界も有れば、無機質な立方体の中にいる様な異界など、様々だ。
他には、明かりが無ければ真っ暗な異界、太陽に近い自然の照明がある異界、水で満たされた異界、など。
魚を育てるか、牛や羊を育てるか、農作や草花、木々を育てるか、ワインを熟成させるか。
特異な異界も存在する。
それは水が無い異界や、火が無い異界だ。
それらは扱いが非常に難しく、水が無い異界なんかは生きた人間が入れない異界だ。
水が無い異界に入れるのはあらゆる水を失ったミイラや乾いた無機物に限られるだろう。
火のない異界はどんな高温に成っても発火しない。
その性質は良いのか、悪いのか、どちらにせよ、特異な需要を満たすものだろう。
一見して使えない異界も、技術や考え方の変化で有用な異界に変わり得る。
それは何度か価値が変動した速界が証明して見せたのだから。
異世界の囚人 ネミ @nemirura
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