朧夜

増田朋美

朧夜

朧夜

諸星正美は、インターネットを使って買い物をするときがあった。そのサイトは、要らなくなったものをほしい人に譲るというサイトなのだが、これが結構よいのである。時おり、ほしいものが、大変な安さで買えることがあるし、何よりも、店員なんかと顔を合わせずに済むというのが、嬉しい限りだった。店員や、他の客に購入目的を聞かれてしまうのも、何となく嫌であるし、応答するのが困難であることもあるからである。

そういうわけで彼女は、ショッピングモールにいくよりか、メルカリなどといったフリーマーケットで、いろんなものを買うようになっていた。まあ、そうなると、家に商品を運送屋さんに送ってもらう必要があるが、彼女はそんなことは送料さえ払っていれば、別によいことだと思っていたので、気にしなかった。

近所の人たちは、最近諸星さんのお宅によく宅急便とか、郵便が来るねえとはいっていたが、それ以上に噂をすることはなかった。自分達も、宅急便をもらうということは、よくあることなので。

今日も、諸星正美は、インターネットで着物を一枚買った。最近着付けの本等を買ってきて、着物の着付けをやり始めている。そしてちょっと出掛けるときには着物を着る。この方が、洋服よりかわいいし、着物は、礼装から普段着まで同じスタイルで行けるということが何よりもよかった。みんな着方は同じなので、へんに気を張る心配がない。そこが着物のすごいところだと思う。日本の伝統刺青をいれた彼女は、これを気に日本の伝統に興味を持ち始めたのだ。

着物は、高いというイメージがあるが、これもリサイクル着物を使えば、洋服より安く入手することができた。うまくいけば、数百円で入手できてしまうときがある。リメイクよう、として売られているものでも、工夫さえすれば、しっかり着用できるものばかりだし、多少裏地等が汚れていても、表地には問題なければ、着物としてしっかり着用できるものが多い。だから、リメイクの材料としてしまうのはもったいない。それよりも、しっかりと、着物として着用してあげたくなってしまうのだ。

着物は、かわいいだけではない。正美は、自分の顔が好きではなかった。洋服なんてきても、美人にはなれないし、大して変わるわけでもない。しかし、着物だと、違う自分になれたような気がして、なんだかすごく嬉しくなるのである。それが、着物の魅力かもしれなかった。違う意味の私にしてくれるところが、着物の素晴らしいところだと、正美は、思っていた。

まあ、リサイクル着物なので、身長より小さいという問題はあったが、それは、着付けのくふうとか、そういうことでカバーするか、あってもなくてもよいものは、ないほうがよい、と割りきる必要があった。例えばおはしょりができないことは、よく指摘されるが、正美は、おはしょりはよく諦めている。そうしないと、なん十枚の着物が、素晴らしい柄なのに処分されてしまうようなきがする。それでは、着物がかわいそうだ。着ないで捨てられてしまうほど、着物にとって寂しいことはないだろうし。できる限り、着物は、着用してあげるのが一番いいのではないか、と思っている。

なので、時おりプリマアプリなどで、安くてかわいい着物を買い、ちょっとしたところに着て出掛けるのが、彼女の楽しみでもあった。

数日後、フリマアプリで買った着物を、運送屋さんが持ってきてくれた。着物は、紙袋にはいっている。通常は、たとうしに包むことが多いが、リサイクル着物であれば、着物は、紙袋とか、ビニール袋にはいってやってくる。その辺りも、着物を気軽に迎えられる、いいツールだと正美は、思っていた。

とりあえず、運送屋さんに代金を支払い、指定された場所にサインをする。毎度あり、といって帰っていく運送屋さんを見送って、正美は、部屋の中にはいり、すぐに封をあけて、中身を確認した。

中身は、黄色い華やかな、大きな桜の花がついた着物。ちょっと袖が長いというところが、昔のきものらしかったが、それ以外に困ったことはなかった。身丈も、ちょうどよいし、おはしょりは期待できなくとも、着られないことはない。身幅もしっかりしているし、ちゃんと着用できそうだ。目立つ汚れもないし、シミもない。やった、今日の着物はあてた!と考えたりしていると、ガチャンとドアがあいて、祖父が部屋にはいってきた。

「何をやっているんだ!」

祖父は怒鳴った。

「これは、1000円で買ったのよ。たいした額じゃないでしょ。」

正美が、思わずそういうと、

「この家に金がないことくらいお前もしらないのか。それに、着物なんて、なんて贅沢をしているんだ!」

と祖父はいう。

「贅沢じゃないわよ。さっきもいったとおり、リメイクの材料として売られていた着物だから、大したものじゃないわ。」

「嘘を言うな。友禅にそんな値段がつけられるものか。お前は働いていないくせに、そんな値段のするものを買ってきて、何て言う贅沢をしている!はやく目を醒ましなさい!」

祖父は、そう彼女を怒鳴り付ける。まあ確かに祖父にとっては、友禅というと、そうなってしまうのだろうと思われるが、それにしても、いくら領収証をみせても、家族が説明をしたとしても、祖父は、わかろうとしないのであった。着物というと、祖父くらいの時代の人は、贅沢きわまりない物になってしまうのか。着物というと、金持ちの老婦人の着ているようなものにしか、みえないのだろう。確かにそういう時代もあったけど今は違うんだよ、といくら説明しても、祖父は全く分かってくれないから、困ってしまう所だ。いやわかるのではない。わかろうとしない。わかる必要がないというか、もうインターネットとかそういう時代になっているという事を知らないという事だろう。着物は本当に需要がなくて、古い着物を買い取って、安く売るというシステムがあるのを知らない。というか知ろうとしない。ただ、祖父にとっては、身分の低い人間なりに、質素倹約に励み、一生懸命働いて、子孫を残すこと。これが一番正しい生き方なのである。

「いいか、お前はな、お父さんやお母さんに養ってもらっているただの障害者なんだ。そんな人間が、着物なんかきて、こんな贅沢をして何になる。もっと、身分に応じた生活というものをしなさい。そしていい加減にこの家を出て、一流の企業に勤めて、お母さんとお父さんにお礼をしなさい。」

そう言われてしまうと、もう死にたくなるのが、本音の部分である。そういうところを言われてしまうと、もういう事はなくなる。だから、おじいちゃん、そういう言葉を言わないで、もしそういう事が本当に正しいんだったら、私に死なせて頂戴。泣きたい気持ちをこらえながら、正美はそれを聞いていた。

本当なら、すぐに、リストカットとかして、自分を罰してやる必要があった。理屈的には、この通りの理屈で間違いないのだが、それは間違いであるという。偉い人たちはそういうことを言うけれど、その理由ははっきりしない。だから、リストカットをやめる気にはならない。

祖父は、お説教を繰り返して、すぐに返品するように、と言い聞かせたつもりになって、部屋を出て行った。でも、正美は着物を手放す気にはなれない。それは、こういう惨めな情けない自分の姿を変えてくれる、本当に、大事なツールであるからだ。着物を着ているときは、そういう惨めな自分は居ない。その瞬間だけでも、正美は自分でない時間を味わうのが好きなのだ。何処にも居場所がない、自己を表現する場所がない彼女にとって、見かけを変えて、自分はここにいないと無理やり自意識を変える事しか、楽になる方法もないのだから。

正美は、取りえず、着物をもって自室に入った。部屋に入って、隠して購入していた包丁を取り出して、自分の手首に押し付ける。でも、手首には、シッカリ花のついた刺青が彫ってあるのだから、包丁を動かすのはやめにしておいた。刺青を入れてから、そういう風に考え直すことはできるようになっている。刺青を壊してしまったら、もう何も残らないじゃないか。この刺青だけが、わたしを

守ってくれるんだ、正美はそういうことを考え直して、包丁を、引き出しの中に隠した。

それでも、私は、生きているんだもの。この人生、無駄にはしてはいけないと思うけど、人生は、つらいことばかりだ。なんで、こういう事ばかりなんだろう。

まあ、そういうことは、考えても無駄なので、正美は、そういうことは、考えないようにしているが、一度考え出すと、止まらなくなってしまうのも又確かだ。自分は、そういうだめな存在で、もう消えても

いい存在だったなあと、考え続ける。偉い人は、考えても意味がないというけれど、考え続けてしまうのである。

それを考えているうちに、諸星正美は、こんな家になんか居たくないと思う様になる。こんな家を早く出て、すぐにどこか居場所を見つけたい。そんな気持ちが沸き起こる。それでは、と思って、彼女は部屋を出た。どこかの喫茶店に入って、なにか読んでいるか、と、彼女は、そう思った。とりあえず、近くのコンビニで求人雑誌を買って、コンビニのイートインスペースを借り、そこで求人雑誌を読み始める。その中で、働けそうな場所を探してみるが、その、職場にかよう交通手段がない。彼女は、車というものを持っていない。車でなら、ほんの数分の距離であるのだが、歩いて行ったら何十分もかかってしまう距離になってしまうのであった。そういう所ばかりになってしまうのだ。なぜか、歩いて行けそうな距離の職場は、どこにもなかった。一つ一つ、丁寧に見てみるが、どこも車無しではいけないし、接客業とか、介護とか、福祉の仕事ばかりで、とてもそういうことは出来そうになかった。周りの人間との付き合いも、正美には非常に難しいものだった。ちょっとしたトラブルで、すぐにパニックになってしまい、興奮してしまって、誰かになだめてもらわないと解決できないという事ばかりだからだ。その対処法としては、周りの誰かに話を聞いてもらうことが必要であった。それは大体、父か母で、それ以外の人物がなることは、一度もなかった。そういうことは、どうしても、他人にゆだねることは、日本の文化ではできそうになかった。

そのうち、家から追い出して、病院に行こうと説得することを商売にしている人がいる、と聞いたことがある。でも、正美は出来る事なら、そういう人のお世話にはなりたくなかった。そういう人のお世話になるのは、本当にひどい患者さんに限ってもらいたかった。

でも、今のままの生活が続けば、自分は、自殺をする以外、助かる方法もないという事も知っていた。第一、仕事が無ければ、生活していけない事は百もわかっている。それをしなければ、まず食べ物も、着るものも、生活するところも得られない。それができないから、家族と暮らしているけれど、家族が、死んだら、もう生活できなくなってしまう。必ず最後は一人になる。自分で自立することも考えなければ、と親切なアドバイスをくれる人も少なくない。でも、そういうことを言うのなら、私に死なせてください。神様、どうして、善良な人々を災害を起こして殺してしまうのですか。それなら、いっその事、わたしを殺してくれればいいのに。

諸星正美は、そういうことを考えて泣きはらした。そういうことを、いつまでも、考えていると本当に死んでしまいたいと思う。もし自殺が合法化されているのなら、すぐにそれをやってしまいたいと思う。それくらい、彼女は居場所がなかった。

不意に、彼女は、背中をトントンとたたかれた。あれれ、一体誰だろう、と顔を上げると、

「諸星さんではないですか。」

と、隣の席に一人の男性が座った。

「あら、岩橋さんじゃないですか。北海道から、来てくれたんですか?」

岩橋さんこと、北海道の幌延町に住んでいる、岩橋一馬さんが、その隣にいた。

「どうしたんですか?北海道から、わざわざここへ来てくれたんでしょうか?」

「ええ、水穂さんに、カリブーの乳を飲んでもらいたくて、北海道から、持ってきたんです。」

と、岩橋さんは、しずかに言った。

「岩橋さん、それなら宅急便で送ってくれればよかったのに。」

と、正美は言うが、

「いやあ、直接手渡した方が、いいのではないかと思いましてね。」

と、岩橋さんは言った。

「でも北海道の遠いところからわざわざ来てくれたなんて、それでは、水穂さんもよろこんでくれたのでしょう?」

「ええ、でも、体が悪くなっていて、もう、後は好きにさせておいてやる方が、いいっていわれました。それは、仕方ないことかもしれないけれど、僕は、水穂さんが生きていらっしゃる間は、必ず、定期的にこっちへ来ようと思いました。」

正美が聞くと、岩橋さんは、しずかにそういうことを言った。

「そう、そんなに悪いの。水穂さん。」

「ええ。それでは、いけないと言う人もいるけれど、僕は、水穂さんにはそっとしておいてあげたほうが、いいのではないかと思いましてね。もう、水穂さんは、疲れ切っていて、もうこの世には居られないでしょう。そのほうが、きっと楽になれると思います。」

いいなあと正美は思ってしまう。水穂さんは、重い病気のため、もうこの世に居られる時間も長くないから、もうそっとして置いてやろうという事になるんだろう。そのほうが良い。でも、正美は、膨大な時間が残っている。そんな時間は、碌なものにはならないだろうから、そんな時間何て要らない。そんな時間があったなら、私は、時間何て要らない。どうせ、わたしの残っている運命何て、一人で生活保護でも受けながら、底辺の人間として、生きていくしか方法もないのだ。だから、その前に、この幸せな暮らしをしているのなら、その間に死ねたら、いいのにな。

「まあ、そうですね。ところで、岩橋さん。」

と、正美は、そういうことを言った。

「岩橋さん、ちょっと岩橋さんに聞いてみたいことがあるんですけれどね。」

「何でしょう。」

「岩橋さんは、ちょっと前まで重度の拒食症だったと聞きました。だって、ほかの人から聞いたけれど、あの、歯が全部抜け落ちてしまったとか。」

「ええ、その通りです。」

と、岩橋さんは、そういうことを言った。

「食べ吐きをあまりにもやめられなくて、歯がボロボロになって抜け落ちてしまったんです。」

「じゃあ、入院したりとかは?」

「ええ、しました。自殺未遂して、病院に担ぎ込まれたんです。半年くらいしたのかな。まだ、死にたい死にたいと叫び続けて、それが完全に止まるまで、保護室から出られなかったんです。そのあとで、僕はまるっきりの廃人の様になって、呆然として食べ物を口にして、やっと退院できました。」

と岩橋さんは、そういうが、それは本当に大変だったという事を、正美は想像できるのであった。入院しなければならない状態は、精神病のどん底である。最近は、ちょっと疲れたから、入院するというケースもあるが、正美のときは、本当に疲れていなければ、入院はさせてもらえなかったから。

「其れで、岩橋さんは、そのあとどうやって過ごしたの?」

「何もしませんでした。何もしないで、平気な顔をして生きていました。」

「じゃあ、なにか分岐点のようなものはあったの?今の岩橋さんは、北海道の幌延町で、カリブーとヤギの飼育をしている牧場主でしょ。」

と、岩橋さんに、正美は聞いた。確かに、拒食症で悩んでいった岩橋さんには、想像もできない人生を、今の岩橋さんは、送っている。

「岩橋さんは、なにか分岐点のようなものはあったんでしょうか?」

正美はもう一回聞いた。それを、ぜひ聞いてみたかった。

「其れが、僕にもわからないんですよ。ただ、ヤギをペットとして飼い始めただけの事で。ヤギを散歩させてたら、公園の雑草を食べてくれたり、子どもたちの人気者になったりして、ヤギが人を集めてくれたんです。それにヤギは乳を取ることができます。初めは、うちの家族だけで飲んでいたのですが、そうしたら、隣の家族に、赤ちゃんが生まれたんです。その子が、酷い牛乳アレルギーがありましてね。それでヤギの乳を半分分けてあげたら、その人たちから、たくさんのお礼をもらって。だから僕は、ヤギを飼育しようと思ったんですよ。そのためには、広い場所が必要でしょう。ですから、もっと広い土地がある、北海道に引っ越しました。北海道には、広い土地がたくさんあったから、その土地を譲り受けて、ヤギを飼って、そのうちヤギだけではなく、もっと栄養価の高い乳を出してくれる、カリブーを飼育してみようかなと思ったりして。」

岩橋さんは、笑いながらそんな話をした。

「で、そのきっかけをくれたヤギは、どうして飼い始めたんですか?」

正美がもう一度聞くと、

「いやあ、ただ、親が会社の上司から、もらってきただけの事です。僕はその世話役を仰せつかっただけですよ。」

と、岩橋さんは、にこやかに笑ってそういうことを言った。

「僕は、向こうから来たものをただ受け取っただけの事です。ほかには何もしていません。」

「そう、、、。」

結局、岩橋さんもそうだったのか。ただ、変わるのを待っていたのか。

「でも、待っているだけでは、いけないって誰かが本の中で言っていたわ。自分でも動かなければダメだって。」

「でも、自分で動けないときだってありますよ。みんなそれを忘れがちだけど、僕は、誰にだってあるんじゃないかなって、思う様になりました。時々、動物たちと触れ合いに、居場所をなくした子供たちなんかが、来訪するときがあるんですが、彼らも、みんな同じことで苦しんでいるんだなっていう気がしますよ。彼らの話を聞いてると。」

岩橋さんは、にこやかに笑っていた。

「そうなんですか。それでは、岩橋さんも私の気持ちがわからないってことかしら。私は、もう逝くところもないし、生きるところもないのよ。もう、どこへも居場所がないってことよ。」

と、正美は、顔こそ笑っているが、

「嫉妬するわ。」

と、一言ぼそりという。

「そうですね。そういうことを言われても仕方ないと思いますよ。でも、僕もそういう事を、いわれたとしてもですよ、向こうから来るのを待っているしかなかったというのが答えでしょうか。それは、反論のしようがありません。」

と、岩橋さんも言うのだった。岩橋さんだって、そういう事だったのだろう。正美は、そういうことを、言うのはやめることにした。

「岩橋さんってすごいわね。」

代わりにそういうことを言う。

「あたしも、岩橋さんみたいなことができたら、いいのになあ。と思うんだけど。あたしには、そういう運はめぐって来ない。あたしは、そういうことは、できないのかなあ。ずぅっとこのまま、居場所のない、ニートとして、生きていくしかないのかしら。」

「そうですね。どうしても、自分でやっていくことができないときもありますよね。まあ、そういう時は、あの、有名なビートルズの曲にもありましたけれども、自然に身を任すしかない、という事なんでしょうか。状況が変わってくれるか、時間が解決してくれるか、そういうことを待つしかないってことなんじゃないかな。」

岩橋さんは、そんな彼女を責めるということはしなかった。そういうことを、岩橋さんは、経験者として、しっかり答えを出している。

「まあ、それはしかたないじゃありませんか。心を病んでいるという事は、仕方ないことなのかも知れない。でも、僕はね、それだけに、一番大切なことまで落としてはいけないとだけは思っているんです。もし、何もなくなってしまったら、新たに何かが現れるのを待つしかないという事も、あるのではないでしょうか。その時は、我慢しないでじっと耐えることも必要なんじゃないかと思います。」

と、岩橋さんは言った。

「正美さんも、つらいかもしれないですけど、しっかり生きてください。」

こんな人生、わたしは何の意味があるんだろうと思うけど、私はこんな人生しか与えられなかったのだ。それが変わるのを静かに待つことも必要なのかも知れない。

「有難うございました。ちょっと、話を聞いてもらって、少し楽になったわ。」

正美は、岩橋さんにお礼を言って、すぐに椅子から立ち上がり、軽く頭を下げてコンビニを出て行った。





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朧夜 増田朋美 @masubuchi4996

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