浮上

深いところを

延々と探り続けた

光も届かない

酸素もない場所に

何かがあるはずだった

その何かが

未来を変えるはずだった

でも結局は

何も見つからないままで

呼吸を

止めていられなくなった


ゆらゆらと

楽な方へ浮かび上がりながら

自分を責める一方で

もう無理をしないでいい

そんな安堵がある


呼吸が整えば

また潜る自分の姿が

まだ浮かび上がってもいないのに

頭の中で

はっきりとした像を結ぶ

だって

まだなにも手に入れていない

この世界で

一番神秘的な

誰も見たことのない輝きが

広大な

底の見えない

海のような場所の

奥深くに

眠っていると

確信できるから

もう一度

いや

何度だって

潜ってみせる


息ができる気配がする

短い浮上を前にしながら

やはり思考は

闇の底を見ている

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