崇高なる伝統

テニスボールが

コートを行き交う


超一流の

世界大会のその場面で

観客はピタリと口を閉じ

まるで息を止めているような

極度の緊張の

さらに上の緊張が

張り詰めている


ラリーが終わる

歓声が爆発する

拍手が

指笛が

解放される

しかしすぐにざわめきに変わり

選手がサーブを打つ時には

もう誰もが

静寂を作り出している


最高の舞台の

完成された伝統


観客はそれをよくわかっている

彼らは騒ぎたいわけじゃない

大声をあげたいわけじゃない

選手を罵りたいわけじゃない


純粋に

そのスポーツの

神がかったプレイヤー

地上に現れた

神の化身を

その最高のプレイを

神の御技を

その目で見たいのだ


そのために

観客は常に自分を律している


その自律が生み出す環境は

世界中のプレイヤーが

憧れる

最高の舞台だろう

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