味のしない料理

どこかの作家が

温かいものを温かく

冷たいものを冷たく

食卓に上げてくれれば満足だ

そんなことを

書いていた


冷え切った料理には

味がない

舌が感じるのは

ひんやりとした感覚だけで

すぐに飲み下すに限る


調味料が過剰な料理も

逆説的に味がない

食材の味は彼方に消えて

残っているのは

辛味

甘味

塩気

酸味

それだけで

その料理がどんな食材を使っているか

そんな考えは

持つだけ無駄になる

料理という形の

味を押し付けるだけの

それも激しく押し付けるだけの物体


味わうこととは無縁の

食事が

こうしていつも

待ち構えている

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