18話 予防接種

1年に1回の予防接種。犬なら、みんなが通る道。


ってことで、今、俺と、のぞかは病院の待合室。

沢山の犬と人間。


俺自身、犬同士会話することはあんまりないけど、

待ってるのも暇だし話しかけてみる。


「こんちは」

横に座ってる、じっとして、おとなしいプードルに話しかけてみる。


「・・・」


「あれ?」

反応がない。


「どうもー」


「・・助けて」

もうこれ以上やめとこう。切実だな。


俺は向かいのオスの柴犬に話しかける。

目がウトウトしてる。

これから予防接種受けるのに、眠りかけてる、凄いな。


「こんちは」

話しかけると、自然な感じで、


「こんにちはー」

と答えてくれる。


お、普通に話せた。

「落ち着いてるね」

俺は話しかける。


「いやーそんなことは」

俺も慣れてる方とはいえ、予防接種の待ち時間に

うたた寝してる犬は見たことが無い。


「ここは何回目?」

そうすれば年齢もわかるだろ。


「えーと、確か18回目ですねー」


「マジで!?」

長老だ。大先輩っていうか、お父さん?


「同じご主人様に飼われてるんですか?」

俺は自然に敬語になる。


「そうですねー。代は変わりましたが同じ家族ですねー」

凄いな。


「どんなコツがあるんですか?」


「そうですねー、ご主人を信じて任せる事ですかねー」

なんか、心に刺さる。けど飼い主が悪い人だったらどうするんだ?


「何事も自然体で」

その方は診察室に呼ばれた。

なんだか誇らしい、カッコいい。俺もあんな風になりたいな。


―――数分後


「キャイーン!」

と、あの老犬の声が聞こえた。


「・・・」

やっぱ痛いんだな。


お疲れ様です。

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