ホテルから見えた氷の下に、腐敗した水死体を見つけた

@yuyu777

氷結

私は、屋根のある商店街のようなところにいた。


ホテルに併設されたカフェで男性と合う。黒いバッグから資料を取り出し、本の校正を行っていた。


ふと外をみると、ちらちらと雪が降っている。薄暗く、空はどんよりと薄灰色の雲が、カーテンのように覆っている。建物の中は暖かいが、床は大理石でできており、私は足先が少し冷えていた。


外を歩いている人々は、ダウンコートのフードを深くかぶり、ポケットに手を入れて歩いていた。


ホテルは土手の縁のようなところに建っていた。土手は10メートルほどの距離をコンクリートで補強されている。土手のすぐ下が拓けていた。学校のグラウンドの半分くらいの広さで、氷がはっていた。


その広場と隣接して商店街が東西に広がっている。それぞれの店の屋根には雪が少し積もっていた。


私はホテルの窓際で、校正作業をしつつ、黒いスーツ姿の男性と談笑していた。突然、

「人が死んでる!人が死んでるぞ!!!!!」と、ホテルの外から男の人の叫び声が聞こえた。


シンと静まり返ったのもつかの間、カフェ内が段々とざわつく。ホテルの中にいた人々の顔が「え?」と声をもらし、表情をなくした。どうやら、土手の下から叫び声が聞こえたらしい。数人が、窓の外を覗きこんだり、立ち上がって指を指している。


例に漏れず、私も窓を覗く。

広場にはっていた氷が割れていた。どうやらここは、少し深い沼か池のようだった。底は見えない。


氷の下に、たしかに白い「何か」が浮かんでいた。

遠目では何かわからなかった。私は野次馬根性バンザイ、ホテルを小走りで出て、土手を滑り降り、その白い「何か」の近くにきた。


氷の下に、白くブヨブヨになったモノがはりついている。それを見た瞬間、頭の中でガンガンと警報がなった。


「それ以上、視線を動かしてはいけない」と、本能が強く働いていた。心臓がドクドクと音を立てている。視界が揺れるほど鼓動が振動し、身体中から汗が吹き出ている。しかし、私は好奇心に勝てず、私は視線を動かし全体像をゆっくり見てしまった。


最初に見た、ぶよぶよで大きな何かは、どうやら「人間のお腹」のようだ。

お腹はパンパンに膨らみ、さながら肉まんのようだった。今にも氷を割ってきそうだ。

次に、頭と思われる場所に目を向けた。同じように水を吸って膨らんでいるようだ。まぶたは団子が二つくっついているようだった。髪型から、どうやら黒髪の男性のようだった。年齢は全くわからない。


足と手は、膨らんだお腹に隠れ、申し訳なさ程度にくっついているように見える。


今が冬なのと、まだ氷が完全に割れていないので腐敗臭はあまりしないようだ。


私は「誰か・・・警察を・・・呼んで・・!」と、ひと言ずつ息を吸い込み、肺活量の無い声を絞り出した。

掠れ、震えている声を何度か出していると、周りの人が気づき始めた。


野次馬の一人だった男性が、死体と同じくらい青色い顔で、携帯電話を取り出し、電話をかけ始める。


商店街をたまたま歩いている人たちも、異変を感じ取り始めたようだ。野次馬が増えてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホテルから見えた氷の下に、腐敗した水死体を見つけた @yuyu777

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る