巨大な石

雨世界

1 私の思い。あなたにちゃんと届いていますか?

 巨大な石


 プロローグ


 ねえ、見て見て。あれ、なんだと思う?


 本編


 私の思い。あなたにちゃんと届いていますか?


 夏の孤島にて。


 そこには巨大な石があった。


 とても、とっても大きな石だ。それは一個の大きな生き物のようにも見えたし、あるいは、なにか孤独な、本当に大きな孤独を表現した、まっさらな緑色の草原の上に作られた、巨大なオブジェのようにも思えた。

 その巨大な石の正体は宇宙から落っこちてきた、大きな隕石のかけらだということだった。

 本当なのかどうかはわからないけれど、現在の調査では、この巨大な石の正体はそういうことになっていた。


 そんな不思議な石を、ほのかは愛しのれおくんと一緒に、その巨大な石のほかには目立ったものはなにもない広大な緑色の草原の上に立って、見上げていた。


 二人のいる世界には透明な南の海の上を流れてくる暖かい風が吹いている。


「はー。すっごく、大きいね。この石」

 口を大きく開けて、ぽかんとした表情をして、ほのかは言った。

「うん。写真で見るより、ずっと大きい」

 ほのかの隣で、図鑑を広げているれおくんが言った。


 ほのかはそれからその巨大な石に近づいて、その白っぽい色をした石の表面を触ってみた。

 感触はざらざらとしている。

 手を離すと、ほのかの手にはうっすらと、その巨大な石の表面から取れた白いつぶつぶのような、真っ白な海岸にある砂粒のような粒子がくっついていた。


 ほのかの横ではれおくんが同じように、巨大な石に触って、その感触を確かめていた。


「あったかい」体をそっと、その巨大な石にくっつけて、れおくんが言った。

「あったかい?」ほのかは言う。

「うん。あったかい。ほのかちゃんも、確かめてみて」れおくんが言う。

「わかった」

 大好きなれおくんにそう言われたので、ほのかは服が汚れることも気にしないで、れおくんの真似をして自分の小さな体をその巨大な石にくっつけてみた。


 すると、確かにれおくんの言う通り、石は(まるで本当にこの巨大な石が生きているかのように)あったかかった。


「本当だ! あったかい!」目を見開いて、ほのかは言った。

「うん。あったかい。どうしてだろう? 不思議だね」にっこりと笑って、そんなことをれおくんは言った。


 そんなれおくんの自然な、自然に対する好奇心に溢れたいつもの爽やかな笑顔を見て、ほのかはその顔を赤くした。(ほのかの顔は、石に負けないくらいにあったかくなった)


 ほのかはそんな自分の顔を隠すために、空を見上げた。

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