彼は私のターゲット
ダンボール
第1話 犬猫の仲
「あ!
「ふっ、油断してる
……を見ている俺
「えっと、もう少し2人とも仲良くして……あともう少し静かにね、お隣さんに怒られちゃうから」
「
「そうだ、千秋は黙って見ていろ、この犬っころがやられる様をな!」と猫っぽい子
「い、犬っころとはなんですか!犬というのは気高き種なのです、これだから邪教徒は……」と犬っぽい子
犬っぽい子の“邪教徒”という言葉が合図となり、言い争いに発展
……どうして俺の家でこんなことになったんだろう
遡ること3時間前、夕飯の材料の買い出しから俺の住んでいるアパートへ戻ると出かける時には見かけなかった2つのダンボールがアパートの前に置いてあった
ダンボールの中を見てみるとひとつは子犬が、もうひとつは子猫が入っていた
昔から動物を飼ってみたいと思っていた俺だが、親からの仕送りで過ごしている身には大きすぎる負担だった
「残念だけど、飼うことは出来ないんだ、ごめんな……」
そう言い残し、子犬と子猫のもとから離れようとしたその時、いきなり大雨が降ってきた
いきなり大雨に驚いて、何を思ったのか俺は、咄嗟に子猫と子犬を抱えて、自分の部屋へと飛び込んだ
子猫と子犬を玄関に残し、体を拭いてあげようとタオルを持って再び玄関に向かうと、そこには子猫と子犬の姿はもう無く、変わりに猫を擬人化したような少女と犬を擬人化したような少女がいた
さっきの子猫と子犬はどこに行ったのとか、玄関は鍵がかけてあるはずなのになんで入ってこれたのとか、色んな疑問に頭の中をかき乱された結果、俺の口から出てきた言葉は
「け、警察に通報しなきゃ…………」だった
その言葉を聞いて、慌て出す犬っぽい少女と俺を睨みつける猫っぽい子
警察に通報するためにスマホへと手を伸ばそうとした瞬間に猫っぽい子がいきなり俺を押し倒してきた
「事情聞いてくれるよな?」
恐怖で死にそうになっている俺を獲物を見つけた時のライオンのような目で見てくる猫っぽい子の提案に俺は首を縦に振ることしか出来なかった
「そ、それであなた達は誰ですか?」
恐る恐る、この2人の少女の正体を聞いて見ることにした
この回答次第では、即警察への通報だ
「わ、私はワンワン教の宣教師の彩希と言います」と犬っぽい子
「私はニャンニャン教の宣教師の璃珠だ」と猫っぽい子
は?ワンワン教?ニャンニャン教?
初めて聞いた名前だ
多分、“あなたは呪われているから今すぐ入会料を何万円払ってください、そして毎月何万円払えば救われるでしょう”とかそういう誘い文句で金をだまし取る新手の詐欺なのだろう
もう少し話を聞いたあと、警察に通報しよう
「そ、それでその宗教の方が僕に何の用でしょうか……というかさっきの子猫と子犬はどこですか?」
「それも含めてお話させていただきます」と彩希さんと言うらしい犬っぽい子が長話をし始めた
「今の地球は人間が支配していると言っても過言ではありません、他の動物は人間に支配されているということになります、それは許せない様々な種の動物たちが日々、人間を自分たちの支配下に置こうと様々な計画を立て、遂行しました。しかしなかなか上手くいかず、困っていました。そんな中、人間を支配している“神”という存在を知った、私たち犬族はワンワン教を立ち上げ、人間に信仰させる計画を立ち上げました、それを嗅ぎつけた猫族がニャンニャン教などという邪教を立ち上げ私達犬族の真似事をし始めました、その結果様々な種の動物たちが宗教を立ち上げ、今では100万以上の宗教が出来てしまいました。その中でも二大勢力と言われている、我がワンワン教は遂に今日、人間への宣教活動を開始し始めたのです!何故か真似をするようにニャンニャン教も今日から宣教活動を開始したみたいですけどね……」
「……おい、犬っころ、我がニャンニャン教を邪教と言ったな?それにニャンニャン教がワンワン教などという陳腐なものの模倣だと?ありえない、真似をしてきたのはワンワン教の方だ、邪教なのはそっちだ」
「なんですって?ワンワン教が邪教?少し教育する必要があるみたいですね……」
「望むところだ!」
なんか2人で喧嘩を始めた、彩希さんの言ってることはよくわかんなかったけど、警察に通報するたなら今がチャンスだ、2人から見えないようにこっそりと抜け出して───
「おい、人間、貴様どこに行こうとしている?まさか警察とやらに通報するのか?」
今まで、喧嘩をしていたはずなのに、何故か目の前に璃珠さんが背後には彩希さんが立っていた…………
「犬っころ、一時休戦だ、他にしないといけないことを思い出した」
「奇遇ですね、私もしなければいけないことを思い出しました、では一時休戦です」
そう言うと2人は俺に近づいてくる
あはは、俺って人気者だなぁ…………
「ぎゃああああーーー!」
何が起こったかはご想像にお任せします
俺へのお仕置きに気が済んだらしい2人は、俺が望んでもいないのにより詳しく“宣教活動”について話してきた
そこから分かったことは、宣教活動の最終目標は地球上の全ての生物の頂点に立つことで目標達成の邪魔になる他宗教をこれ以上ないくらい嫌っていること
そして、彩希さんはあの捨て犬で、璃珠さんがあの捨て猫だったらしい
「……ほんとに犬と猫なんですか?」
「ほんとです、犬になってあげましょうか?」
「え?そんなに気軽に変身できるんですか?」
「はい!行きますよー!えい!」
ポワンと言う気の抜けた音と同時に彩希さんがいなくなり、変わりにさっきの犬がいた
「へー、そんなに簡単に変身できるんですね」
「ワンワン!ワンワン!」
「あれ?ワンワンしか言ってくれなくなっちゃった」
「千秋にひとついいことを教えてやろう、犬の姿だったり、猫の姿だったりするとその時は人の言葉は喋れない、そして1度変身すると10分は変身できない、だから犬っころが人の言葉が喋れなくなっているうちに、ニャンニャン教への入信の儀式を執り行おう」
「そうですね…………ってえ?嫌ですよ、よく分からない宗教なんかに入りたくないです!絶対にいやです!」
「ほぉー、そんなこと言ってるまた神の鉄槌が────って痛い!こら、犬っころ噛むな!」
もう入信するしかないと半ば諦めていたところ、彩希さん(犬バージョン)が璃珠さんの足を噛み始めて、入信の儀式は行われずに済んだ
彩希さんが人の姿に戻った後、彩希さんと璃珠さんの口論が始まり、そこから逃げるように夕飯の準備を開始、彩希さんと璃珠さんのお腹がなったところ
でちょうど夕飯の準備が終わり、今に至る
どうやらさっきの口喧嘩の最中にお互いのことを名前で呼び合うことと俺がワンワン教かニャンニャン教のどちらかに入信するまで帰らないことも勝手に決まってしまったみたいだ……
「ご飯も食べ終えたし、さぁ、ニャンニャン教への入信の儀式を再会しよう」と璃珠さんが言うと
「邪教では無く神聖なワンワン教への入信の儀式を始めましょう」と彩希さんが張り合いまた口論に……
俺はどうなってしまうのだろう……
彼は私のターゲット ダンボール @nekokorone
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