第4話
「っ…」
チュッとリップ音を立てて、一度唇が離れたと思うとまた近づいてきた。
「ちょっと待って?!」
「なんですか?」
「なんで、キス…するの?」
「は?先輩はバカなんですか?」
え……。
今バカって言った…?
「ここまでしてんだから、いい加減気付いて下さい」
そう言ったかと思うと、またあっけなく唇は奪われた。
次はすぐ離れなくて、どんどん深くなっていって、柚季くんに飲み込まれそう。
息をするのを忘れていて苦しくなって、助けを求めるとそっと離してくれた。
「先輩かわいい」
ちょっと今のはずるい…。
少し大人びた潤んだ瞳でそんなこと言わないで。
「先輩は俺のこと、かわいいって言いますけど、かわいいのは先輩の方ですから。ちゃんと自覚して下さい」
最後にそう付け加えて、柚季くんは私を開放してくれた。
後輩の柚季くんに、こんなにドキドキしたのは初めてだ。
そして柚季くんは何事もなかったかのように、元いた場所に戻ってパソコンで作業をし始めた。
い、今のはなんだったんだろう…。
呆然と柚季くんを見ていると、目があってしまう。
「なに?もう一回して欲しいの?」
なんて言うもんだからドキッとした。
「違う!いや、その、柚季くんってそんなキャラだっけ…?」
「こんなキャラですよ。他の先輩達には内緒にしておいて下さいね」
柚季くんは極上の作り笑顔でそう言った。
もう柚季くんのギャップについていけない。
.end
【短編】柚季くんのギャップについていけない。 咲倉なこ @sakura-nako
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