第3話



「な、なに…?」



急に距離を縮められ、不覚にもドキッとしてしまった。



「先輩が動揺した顔、超そそる」



そう言ったかと思うと、私の頬に手を添える柚季くん。


触られた瞬間、びっくりして少し肩が揺れる。



…なに?どうしたの?



そんなこと思っても、なぜか声が出せなかった。


柚季くんが作り出す空気感にのみ込まれそう。


何もできない私を見て柚季くんは、口角を上げて笑った。


あのかわいい柚季くんがやけに色っぽく見えて、私の頭はどうかしちゃったのかな。


柚季くんから目が離せない。



すると次第に柚季くんの手が私の唇に近づいてきて、親指でそっと唇をなぞる。


全身がゾワッとした。


なにこれ。




私、こんな柚季くん知らない…。




「先輩が悪いんですよ」



柚季くんはそう言って、ゆっくり距離を詰めてくる。


見たことがない柚季くんの表情に心臓がうるさく鳴り響く。



「このままだとキス、しちゃいますけど?」



と、あと数センチで唇と唇が触れそうなときに柚季くんは言った。



「…ダメ」


「じゃあ抵抗してみてよ」



腕に力を入れてみても、柚季くんの手の力には逆らえない。


もう片方の手で、柚季くんを拒もうとしても、その手はあっけなく柚季くんのもう一つの手に捕まった。



「先輩って本当、かわいいですね」



かわいい柚季くんから、かわいいと言われる日が来るなんて。


そんなことを考えている隙に、私の唇に柚季くんの唇が触れた。



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