設定公開:イリス=オリヴィエ連合王国の航空行政と航空機用エンジン 前編
お疲れ様です。熊吉です。
イリス=オリヴィエ戦記も、もう投稿開始から1年が経過し、その間に、いろいろな事がありました。
新たにブックマークやフォロー、評価をいただくことができたり、レビューを書いていただけたり。
そして、作中に登場する王国の主力戦闘機、ベルランD型の模型を作っていただくこともできました。
この様にありがたい申し出をしてくださり、しかも、熊吉の細かな設定まで拾って模型を作ってくださった紫電改丙様。とてもありがたく思っております。ありがとうございます。
熊吉も多くの作家様と同じく書籍化を目指してはいるのですが、どうやらまだまだ力不足の様で、遠い夢、叶わぬ夢である様です。
しかし、多くの方から評価や応援をいただけたことは、本当に嬉しく、そして、ここまで本作を書き続ける、大きな力となりました。
改めて、感謝を申し上げます。
本当に、いつもいつも、ありがとうございます。
次話、20話で、主人公にとっての目指すべき敵、雷帝との決着と、王国の戦争の結末を描くことになります。
精一杯やらせていただきますので、どうぞ、最後までお付き合いいただけますと、幸いです。
また、エピローグとして1話分のプロットを作っていたりもしていますので、本年中はまだまだ、イリス=オリヴィエ戦記をお楽しみいただけると思います。
さて、設定公開と題しました本節では、タイトルにあります通り、イリス=オリヴィエ連合王国の航空行政(どんな流れで航空機の開発を行っていくか)と、王国で使用されている航空機用エンジンの設定について、ご紹介させていただきます。
もし興味がおありでしたら、どうぞ、熊吉にお付き合いいただけますと幸いです。
※長くなったので、前、後編に分けさせていただきます。
:イリス=オリヴィエ連合王国の航空行政
我らが王国の軍用機開発ですが、ざっくりご紹介しますと、3つの行程に分かれています。
それは、
1:誕暦○○○○年航空整備方針の作成
2:要求仕様の作成
3:競走試作・優秀機の選定と制式採用
という流れになっています。
航空整備方針というのは、王国では5年ごとに改定されることが標準とされているもので、王国が次の5年間の間に、どんな性格の軍用機を整備し、戦力化してくかの方針を決定するものであります。
これは、諸外国がどんな航空軍備を整備しつつあるか、その状況を確認し、予想も交えながら王国の航空軍備に取り込んでいく過程になります。
この航空整備方針が定まると、次に、各航空機メーカーや、王立航空工廠などの公的機関などと、現在の理論や技術によって、「どんな性能の機体なら作れそうか」が決められます。
これが競走試作に参加する各メーカーに渡される、新型機の性能要求仕様となり、各メーカーは求められた性能を満たすか、それ以上の性能を目指して試作機の開発に入ることになります。
新型機開発の最終段階が、競合機を比較し、どの機体を量産に移すのかを検討するものになります。
そしてもっとも優れた機体が制式機となり、量産され、王立空軍に配備されていくというのが、一連の流れとなります。
これは、海軍や陸軍の航空機の試作課程を参考に作った設定になります。
王国で言う「航空整備方針」に相当するものとして、海軍では「航空機種及性能標準」というものがあり、また、陸軍では、「陸軍航空本部兵器研究方針」というものがありました。
有名なゼロ戦の性能要求仕様は、この「航空機種及性能標準」の内容に沿って、当時の理論や技術で実現できるとされた範囲で決定されています。
また、陸軍の試作機にはキ番号が振られていますが、「陸軍航空本部兵器研究方針」が改訂される度に、必要な試作機をまとめて発注しているため、ある特定の年度にまとまってキ番号が増える様になっているらしいです。
熊吉がこういった設定を作ったのは、作品にリアリティを持たせるのと同時に、一般的によく知られている、要求仕様の作成から競走試作、という流れの前に、航空軍備全体を俯瞰(ふかん)して決める手順が存在したということを、読者様にもご紹介したいと思ったからです。
何と言うか、せっかく読んでいただいているのだから、熊吉は読者様に出来る限り「得」をしていただきたいと思っています。
興味ない読者様もおられるとは思いますが、ここまで読んでくださっているのは興味のある読者様だと思って、続けさせていただきます。
王国が定める航空整備方針によってどんな機体が開発されたかと申しますと、例えば、「誕暦3690年航空整備方針」では、作中に登場する機体としては、主人公たちが最初に乗っていた複葉戦闘機である「エメロード」や、王国の主力双発爆撃機である「ウルス」、偵察や連絡に用いられる「プラティーク」などがあります。
また、この次に作成された、「誕暦3693年航空整備方針」では、次期主力戦闘機として「エメロードⅡ」が、将来主力戦闘機として「ベルラン」が開発され、開戦後の激しい戦いを支えていくことになります。
航空整備方針は5年ごとに改定されるのが標準なのですが、3693年に新たに改定が行われているのは、第4次大陸戦争勃発直前の緊迫した情勢で、王国が装備する航空軍備が「陳腐化」していることが認識されたためです。
これは、史実の陸軍で、キ43(一式戦闘機「隼」)と、キ44(二式戦闘機「鍾馗」)が開発された経緯を元としています。
この2つの機が試作される少し前、陸軍は欧州に派遣した武官から、欧州の戦闘機が重武装化、高速化しているということを知らされました。
当時、陸軍では優れた格闘戦性能を持つ九七戦などを有していましたが、最大水平速度500キロメートル以上が当たり前となりつつある情勢を踏まえると、その性能が陳腐化しつつあることは明らかでした。
実際、九七戦では高速化した戦闘機や爆撃機に対して対抗することが難しく、すでに日中戦争のころから苦戦を強いられる場面もあった様です。
そこで陸軍はキ43(従来の格闘戦優先に近い性能の戦闘機)と、キ44(欧州の新鋭機に対抗できる、高速、重武装の戦闘機)を開発し、戦力を刷新することを決めました。
一説によりますと、陸軍は、どうも、キ43を対戦闘機「だけ」に使える補助的なもの、キ44を戦闘機も爆撃機も落とせる「理想的」なものとしようとしていたらしいです。
この両機の関係を元に作成したのが、王国の次期主力戦闘機の「エメロードⅡ」と、将来主力戦闘機の「ベルラン」の関係です。
王国の場合、連邦や帝国の新鋭機に対抗できる高性能機「ベルラン」の登場までのつなぎとして、「エメロードⅡ」を作ったという形になっています。
情勢の悪化に合わせ、旧式化している軍備を急いで近代化しようとする。戦争に至るまでの緊迫した空気というか、時代のうねりというか、そういうものを端的に表すものとして、熊吉はこの設定を作りました。
なお、史実では、キ44は思ったほどの性能を発揮できず、離着陸の難しい、ベテランにしか扱うことのできない戦闘機となってしまい、キ43が主力として長く戦うことになってしまうのですが、その辺のゴタゴタも、熊吉は面白いと思います(高速で重武装のキ44も、搭乗員によっては「強かった」とする評判もある様です)。
読者の皆様にも、ぜひ、そういうミリタリーの面白い部分に触れていただければと思います。
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