第6話 決着
真っ暗になった。
最初に来たと同じだ。
だが――今は《回復》の影響か、薄っすらとだが周りが観・え・る・
「何の真似だ! そもそも剣はまともに扱えんぞ!」
「「シュバッッ」」
「?」
何か音がした。
嫌な音だ。
まるで、肉を切り裂くような――
「カハッッ」
……口から……血?
何か、顔が熱くなってきた。
火傷しているような――!!
首だッ
俺の首がッ……半分斬られている。
だが――――治せる範囲だ。
目の前にいるのは……テセウス。
直ぐに再生して……いける。
「ハァッ!!」
俺は跳んだ。
思いっきり、剣を向けながら。
届きそうになったその瞬間、テセウスが消えた。
「「パシュッ」」
「今、消え――」
次が来る。
直ぐに体勢を立て直さねば。
俺は鉄の棒の上に立とうとした。
だが、立てなかった。
――俺の首から下がなくなっていたのだ。
「え?」
俺は狼狽ながら鉄の棒の上に転がった。
「な、何が起こった」
テセウスが俺を拾い上げる。
「見えていたとは驚きだ」
そして、パチッという音と共に、再び明るくなった。
「お、俺の体は――」
「自己紹介が遅れたな!! 俺の名はテセウス」
「俺の話しを聞――」
「ギルド『ビフレスト』のメンバーだ」
この状況で自己紹介かよ。
お前のせいで首だけになっちまったっつうのに。
「首を斬るって、俺が回復士じゃなかったら死んでたぞ?」
「……そうか、《回復》か。
お前、何か勘違いしているな」
「何?」
俺はテセウスに、回復士はどういうものなのかを教えられた。
回復士は首を切られたら普通は死ぬこと。
回復士は暗闇になったら目が見えないのは変わりないこと。
回復士は1キロメートルも跳べないこと。
そして、回復士は自分の剣を受けれるほど頑丈ではないということ。
俺はその事実に衝撃を受けた。
だが、それと同時に、何とも言えない喜びが心の奥から溢れ出てきた。
落ちこぼれだった俺が、『ビフレスト』の剣士と渡
り合ったのだ。
そして、間接的ではあるが認められた。
初めての経験だ。
「何で跳んできたこと知ってるんだ?」
「ノクシャスが見てたんだ。面白そうな奴がいたら連れて来いっていいつけたからな」
てことは、受付の女が言ってた「上の者」って……
「もう気付いてるかもしれねぇが、この依頼を民間に出したのも、褒美の話を流したのも、受付の奴らに連れて来させろと命じたのも、全部俺がやった」
マジかよ。
全部コイツの仕業だったとは……
「何のために?」
「戦ってみたかったからだ。冒険者とやり合うのは飽きたのでな」
「だからって、首を斬るのはおかしいだろ!!」
「気付いてないと思うが、お前が俺の剣を受けた時、二本目の剣で膝を斬ったんだよ」
テセウスは真面目な顔になって続ける。
「だが、お前は足を一瞬で治した。そこで、試したくなったんだ」
そう言うと、嬉しそうににやけ始めた。
「その目論見が正しかったわけで。光輝く金の卵の発見よ!!」
なんて奴。
人を斬る事に何の躊躇もない。
それどころか楽しんでいるように見える。
「ところで、お前の名前は何だ?」
「ラルグだが」
「ラルグ……よし」
何がよしなんだ。
「今日からここで俺と修行しろ。ついでにその生意気さも治してやる」
絶ッッッッ対に嫌だ。
こんなのと過ごせたもんじゃない。
自分しか回復できない落ちこぼれ回復士が自分を回復し続けてたら最強になった件 @p @pppppp172454388
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