月の舟
雨世界
1 私は歌を歌った。
月の舟
プロローグ
ずっとあなたを待ちながら。
本編
私は歌を歌った。
私は恋をした。
それは突然の恋だった。
それは突然の出会いだった。
私はあなたに出会い、恋に落ちた。(本当にすとん、と落ちた)
あなたは私の前に本当に突然あらわれた。
まるで運命のように。
まるで映画のワンシーンのように。
初めからそうなることが決まっていたみたいに。
私の前にあらわれて、私の心を奪っていった。
そして、私の前から、いなくなった。
消えてしまった。
風のように。
どこか遠い場所にいってしまった。
だから私は泣くことにした。
一人ぼっちで泣くことにした。
好きなだけ、大好きなものを失った子供みたいに泣くことにした。
やがて私は月を見るようになった。
月を見て、歌を歌うようになった。
あなたを思って。
歌を歌った。
毎晩、毎晩、歌を歌った。
一生懸命、歌を歌った。
恋の歌。
月の歌。
夜の歌。
いろんな歌を歌った。
喉がかれるまで。
……私の命が、尽きるそのときまで、一生懸命、歌を歌った。
それが私の人生だった。
それが私の初恋だった。
それが私の美しい思い出だった。
ありがとう。
本当にありがとう。
私に、希望を与えてくれて。
私に、勇気を与えてくれて。
私に、夢を与えてくれて。
こんな私に、愛を教えてくれて。
本当にありがとう。
大好きです。
本当にあなたのことが、大好きです。
今も、……そして、これからも。
私はゆっくり目を閉じる。
すると、真っ暗闇の中にあなたの顔が見えた。
あなたと出会えて、私はにっこりと笑った。
これから訪れる、長い眠りの中で、まず最初に、あなたに会うことができた。
これから、とっても、素敵な夢が見られると思った。
やがて私は月の舟に乗った。
ずっと会いたかった、遠い世界にいる、あなたに会いに行くために。
月の世界に行くために。
月の舟 終わり
月の舟 雨世界 @amesekai
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