超人社会で親を殺され敵を討つまでのベタな物語

カカオ

業火編

第1話 始まり

 2020年 7月24日 東京五輪開催式


開催地東京は世界じゅうの人が一つになり、熱狂を共に味わっていた。


この日を言葉で表すなら「幸せ」「歓喜」等が似合うだろう。


しかし運命から渡されたものは真逆の言葉だった。


地球の近くを漂っていた小天体が急に軌道を変えたという。地球付近で起こった急な軌道変更。

悲劇にも落下点は東京。


東京には他国の人も含め何千万もの人で溢れていた。


もうどうしようもできない…


人々は運命を受け入れるしか無かった。


そして人類…地球に存在する生命体のほとんどが絶滅した。

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そこから何百億年と時が流れた。

その間で運よく生き残った生物が繁殖し、時間をかけて進化し、人類という存在が誕生した。しかも誕生した人類は猿人等のような猿よりの人ではなく、以前の人のような知能と見た目をしていたという。


しかし以前の人と全く違うものがあった。



それは特殊能力だ!人々はその能力をと呼んだ。



「そして人々は瞬く間に文明を発展させ今に至る。今日の授業はここまで。

この辺全部テストに出るからな。覚えておくように。

おい!まだ挨拶とホームルームがあるだろ!帰ろうとするな!」


6限歴史。終わると我先にと帰る準備をする生徒を先生が叱る。


無事挨拶とホームルームを終えやっと正真正銘の帰れる時間になった。


「帰ろうぜ。火炎。」


響希ははじけるような笑顔で肩に手をのっける。よほど帰りたかったのだろう。


火炎はセットに1秒もかからないようなボサボサの赤毛の頭をかきいた。整った顔つきの目尻の鋭い二重の男は、だるそうな目で響希を見てため息をついた。



「はぁー。毎日毎日お前早いんだよ帰り準備。どうせまた置き勉してんだろ。」

「ちょっおい!言うなよ!先生まだいるんだから!」


響希は必死に火炎の口をふさぐ。が、もう手おくれみたいだ。


「おい響希。またお前置き勉してんのか。ちゃんと持って帰れ!」


社会の佐藤先生に目を付けられた響希は早速怒られた。


置き勉の常習犯の響希は激怒された。怒られている響希を横目に見ながら、火炎は一人で黙々と帰りの準備をし、教室を出た。




「おーい!待てって!置いて行くなよ!」


校門を出ようとしたとき響希の声がした。たれ目で金髪のイケメンが息を切らしながら全力で走ってきた。


「置いていくなんてひどいぞ!だいたいおまえのせいで佐藤の奴に怒られたんだからな!まあ勉強持って帰って無いけどな。」

「ハァッ!お前持ってかえって無いのか!あの状況で良く先生の目を騙せたな。」


響希の衝撃の一言に火炎は驚いた。


まさか先生と1対1の状況で持ってかえらなかったなんて、佐藤先生一体何をしていたのだ…


火炎はあきれた。


「まぁな、この天才響希様を前にしたら置き勉なんて余裕だぜ!」


「ハイハイ。さすが天才クン。素晴らしいね。」


自信満々の響希を火炎は棒読みで流した。

謎の自信と共に胸を張ってドヤ顔をする響希に火炎はあきれることすら諦めた。


「馬鹿なこといって無いで早く帰るぞ。おまえのせいで帰るのが少し遅くなったんだからな。」


今日は録画をしていたドラマを見なくてはいけない。

かなりとりためてあるからな。


火炎は小さな電卓のような機器を学生服のポケットから取りだし、0~9の数字が一文字入ったボタンを押して数字を打ち込んだ。


この電卓のような手の平サイズの機器は「ワープ」できるもので、“ワープテレフォン”といい、家の座標を打ち込むとそこにワープできる。

ちなみに記憶機能付きのものもあるが、これ(3000円)と比べてとても高い(25000円)。


慣れた手つきで数字を打ち込み、右下の「ワープ」と書いてあるボタンを押そうとしたとたん、後ろからか声が聞こえた。


「おーい!お二人さん帰るの待って!」


声のした方向を見ると誰が学校からこっちに向かって走ってきた。


…雫だ。


艶やかな黒髪でボブの女の子が、全速力でこちらに向かってくる。


「ハァハァ。…今から帰るところでしょ二人とも。一緒に帰らない?

嫌だったら一人で帰るけど。」


えぇ…ドラマを撮り貯めてるのに。

一緒に帰りたいけどドラマを見たいし…せっかく今日は早帰りだし見れるチャンスなんだよなぁ…


火炎は断ってドラマを見るか、それとも一緒に帰るか。この二択で揺れた。


「…ごめん用事が、グフッ!!!」


結局ドラマを見ることを選択した火炎が断ろうとしたとき、突然横やりが入った。


響希が断ろうとした火炎を口封じするためにまさかの腹パンをしたのだ。当たったところはもちろん鳩尾みぞおちだ。


「いいよ。火炎も俺も用事なんて無いし。」


人に腹パンをして、しかも勝手に用事の有無を決めといて…どんだけ一緒に帰りたいんだよ。


火炎は鳩尾の痛みに耐えながら、響希の天性の女子好きに呆れた。

いや呆れたというより諦めた。考えるのを。


「じゃあ決まりね。みんなで帰りましょう。」


そんなに一緒に帰りたかったのだろうか?


火炎はよく疑問に思う。

雫は明るく優しくて他人に好かれるような性格をしている。

そのうえ頭もよく運動神経もそこそこあり、いろいろな才能に恵まれている。

そして何といってもかわいいのだ。クリッとした二重の大きな黒目。整った顔のパーツ。顔も小さくボブの髪型がよく似会う。

昔の…。

少し何かが脳裏を横切った。古びた昔の記憶。小さな女の子?顔は思い出せない。大まかにしか覚えていなくて、ほとんどが忘れてしまっている。


周りからば学年一の美少女"と呼ばれる程だ。


そんな絵に書いたようなマドンナが友達もいないわけも無いのに、なぜいつも一緒に帰ろうといってくるのか?


そんな疑問が頭を過ぎるが考えても仕方ない。といつも放棄している。もちろん今回もだ。


「あ。響希クンそういえばさっき火炎クンのこと殴ったよね。ダメだよそんなことしたら。火炎クンに謝って。」

「はいッッッッ!ごめんなさいッッッッ!」


火炎を殴った響希を雫は叱り付けると、響希は大きな声で返事をし、めったに俺に謝らないのに頭を深々と下げて謝ってきた。

これじゃあ響希は雫の飼い犬にすぎない。


いつもはあんなに言うことを聞かない響希を一発で黙らすなんてさすがマドンナ。


いいぞもっとやれ!できればもっといろいろ注意してほしい。


火炎は感心?をした。


「とりあえずそろそろ帰ろうぜ。時間も無いし。」


鳩尾の痛みが喋れる程までひいてきた。


火炎は手に持っていた“ワープテレフォン”を学生服のポケットにしまった。


「そうだね。じゃあ気を取り直して帰ろうか。」


雫は無邪気に笑う。


今日もこれで終わりか…


不意に空を仰いだ。空は曇天。今にも雨が降りそうに黒い。


この日が運命の大きな分岐点。それを火炎は知る由もない。




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