ずっと…… 20
目が覚めるとまだ暗くて、布団から出ていた頬が、やけにヒンヤリしていて、もう一度布団に潜り込む。
隣では、規則正しく胸が上下していて、眠りの深さが見て取れた。
狭いシングルベッドだから、藍は殆ど壁に背中を付けていて、真横を向いて眠ってる。
そんな寝苦しそうな体勢でも、オレに腕枕をしてくれていて、
その優しさが嬉しくて、嬉しくて、藍の胸に顔を擦り寄せて甘えてみる。
いいよね。今のうちだけ。起きてるときは、恥ずかしくて絶対出来ないと思うから。
ぁ……
『恥ずかしい』というワードで、昨夜の自分の姿を思い出して、ボワッと急激に顔が熱くなった。
もっと恥ずかしい姿、見られちゃったんだ…
ひと月前の共同作業の比じゃなかった。
変な声も出ちゃってたし。
あんな声が、自分の口から出るなんて思わなかった。
ああいう行為で、今まで声なんて…
身体の疼きと共に、藍への気持ちが次々と溢れてきて…
冷静になって思い出してみると、声も大きかった気がする…
は…恥ずかしい…
どんな顔すればいい…?
チラッと藍を見上げて、布団を顔の半分位まで引き上げた。
ホントは、嬉しさの方が勝ってるんだ。
やっと、藍を受け入れる事が出来たから…。
しかも、あのまま、ずっと繋がっていたい_なんて、思ってしまった。
藍…
オレが、イキ顔見たい_なんて言ったこと…覚えてた。
単なる嫉妬から出た言葉だったけど…
藍なりに、気に留めてくれてたんだね。
けど…オレのも見られた_て、事だよね?…どうだったかな…気になる……て、ああ!オレは乙女か?!
ぁ……そんな事より、
今日、朝早いんだよね?
枕元に置いておいた腕時計で、時間を確認する。
そろそろ起こさないと…。
ベッドから降りてカーテンを開ける。
うわっ眩しい。
それほど太陽の位置が高くないせいか、ダイレクトに瞳の奥まで入ってくるようで、開けてるのが辛い位だ。
藍を見ると、太陽の光で眩しそうに眉間に皺を寄せていたけど、直ぐに穏やかな寝顔に戻った。
「…ふふっ」
そんな様子を見ていて、思わず笑ってしまった。
こんな風に寝ていると、高校生なんだよね。
出会った日の翌日も、藍の髪が太陽の光に透けていて…見惚れてしまった事を思い出す。
その後、藍の機嫌が悪くなっちゃって、かなり焦った記憶がある。
藍…
オレ達、色々あったよね…
もうダメだ…て、思った時も何度もあった。
その度に、藍が手を差し伸べてくれた。
何度も何度も、ネガティブになりかけてたオレをポジティブに引っ張っていってくれた。
オレ…藍じゃなきゃダメなんだ…
だから、ずっと傍にいて。
その代わり、この生まれたての太陽に誓うよ。
藍を絶対に幸せにする。
もう辛い目にあわせないから。
オレも強くなる。
だから、ひとりで矢面に立ったりしないで。
2人で力を合わせて乗り越えていこう。
「…藍。起きて。お仕事遅れちゃうよ」
一生離さない。愛してる、藍。
【end】
好きだなんて言えない 蒼井 草太 @soraoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます