第19話 第3章第2節1項:宮沢賢治の最後の手紙
以上のように整理した上で、賢治の最期を死の受容という観点で改めて読み解いていく。ここで使う資料は、絶詠、1933年9月に教え子の柳原昌悅に宛てた手紙である。(最後の手紙と通称される)
最後の手紙
488 九月十一日 柳原昌悅あて 封書
(表)稗貫郡亀ケ森小学校内 柳原昌悅様 平安
(裏)九月十一日 花巻町 宮澤賢治(封印)〆
八月廿九日附お手紙ありがたく拝誦いたしました。あなたはいよいよご元気なやうで実に何よりです。
私もお蔭で大分
あなたがいろいろ想ひ出して書かれたやうなことは
僅かばかりの才能とか、器量とか、身分とか財産とかいふものが何かじぶんのからだについたものででもあるかと思ひ、じぶんの仕事を卑しみ、同輩を嘲り、いまにどこからかじぶんを所謂社会の高みへ引き上げに来るものがあるやうに思ひ、空想をのみ生活して却って完全な現在の生活をば味ふこともせず、幾年か
あなたは賢いしかういふ
どうか今のご生活を大切にお護り下さい。上のそらでなしに、しっかり落ちついて、一時の感激や興奮を避け、楽しめるものは楽しみ、苦しまなければならないものは苦しんで生きて行きませう。いろいろ生意気なことを書きました。病苦に免じて赦して下さい。それでも今年は心配したやうでなしに作もよくて実にお
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(52)宮澤賢治 『全集13巻』p.450より
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