第16話 第2章第3節3項補遺:曾祖母の死

 ここで、祖父の死の前年に起きた曾祖母の死について述べておく。本論から少し逸れる形になるが、筆者の死生観の形成の一端を示すため脚注に付す。

 祖父の死の前年の夏8月9日、曾祖母のすぎが亡くなった。(「すぎおばあちゃん」と呼んでいた。)曾祖母は祖父のような突然死ではなく、脳梗塞による入院生活が長く続いていた。入院と同時にボケも始まっており、終末期には筆者のこともよくわかっていない状態が続いていた。見舞いに行くたびに病院の消毒の臭い、老人保健施設にも通じる加齢臭に言いようのない不快感を覚えていた。

 ある日年上の従姉妹との会話の中で「もうお見舞いに行きたくない。すぎおばあちゃんが死んじゃってもいい。」と筆者が売り言葉に買い言葉で言ってしまったことがあり、泣きながら言い合いをしていた。祖父が仲裁をしてくれ、従姉妹とは仲直りをしたが、程なく曾祖母は亡くなった。「自分が死んじゃえばいいなんて思ったから曾祖母は死んだんだ」と心のどこかで思い続け、誰にもそのことは言えずにいた。曾祖母の1周忌が終わり、ひと段落したところで祖父の死が訪れたことになる。

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