第14話 第2章第3節2項:祖父の死の様相

 2009年12月26日に65才の祖父は自宅で突然死した。祖母は仕事で外出しており、車で迎えに来てもらおうと電話をかけたが出ず、タクシーで帰宅すると居間で祖父が倒れていたらしい。当時、愛知県婦人消防クラブ連絡協議会の代表を務めていた祖母は、すぐに祖父に救命措置を施し救急車を呼んだ。そのまま病院に搬送されたが原因は分からず、その日の夜に祖父は亡くなった。通夜や告別式はあっという間に終わってしまい、遺体を焼いて骨上げするとき、文字通り変わり果てた姿を見て、親戚一同で泣き通した事を今でも思い出す。

 10年前にしても65才というのは若い死で、綺麗に残った頭蓋骨を骨壺に収めるとき頭蓋骨の大きさで蓋が浮いてしまい、斎場の職員さんが「失礼します」といいながら箸でぐっと押さえつけて蓋を閉めたとき、「いーちゃんは死んじゃって、戻ってこないのだな。」と改めて実感した。

 祖父が亡くなって一番ショックを受けていたのは祖母ではあったが、取り乱していたのは親戚の叔母たちであった。仏壇の前では祖父が生きているときと同じように話しかけ、「なんで、どうして」と繰り返していた。当時は「いーちゃんは死んじゃったのだから戻ってこないのは当たり前だし、しょうがない。」と半ば冷めた考え方で叔母たちを見ていたが、いま改めて叔母たちの行動や言動を振り返ると以下の3つが要因として考えられる。1つ目は、頭では分かっているけど、祖父の死を冷静に受け止める事が難しいこと、2つ目は、生前と同じように祖父に話しかけることで、祖父の霊を慰める事ができると考えていたこと、3つ目は、祖父との過去の思い出や出来事を反芻し、言語化することで、この先祖父との思い出を新しく作ることができない自分自身を慰めることである。

 ここで、当時12才の筆者が「いーちゃんは死んじゃったのだから戻ってこないのは当たり前だし、しょうがない。」といささか冷静に叔母たちを見ていたこと、その時あった違和感について考察し、これらが要因とされる叔母たちの行動や言動の裏付けとしていきたい。

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