第95話 ご褒美は何?
一晩中、16番冒険者ギルドの明かりは消えなかった。
すべての原因はあの人だよ。陽キャの頂点みたいなお姉さんがどんちゃん騒ぎをしているからだ。それも彼女の護衛である黒服連中も巻き込んだ壮大なお祭りだ。
「ほーら、飲め飲め! 今日は全部私のおごりだ! おい! ウィンフィールド! 何しけた顔してんだ、もっと楽しい顔しろ、今日はお前が主役だろっ! おら、飲め!」
ユバ・ホーエルン、公爵姫とも呼ばれてる。
このホーエルン魔法学園のいっちゃん偉い人だ。帝国バイエルンで権威あるホーエルン公爵家の当主でもあり、何もしないでも毎日お金が入ってくる立場。
だけど冒険者になって、賢者として大成した凄い人。正直、普通に尊敬している。そのバイタリティはどこから出てくるんだ。
だけど、強烈な酒を飲ませようとしてくるのは止めて欲しい。
俺が頑なに断ってると。
「お前、つまらない奴だなあ! あ、そこへいるのはズレータ・インダストル! お前も活躍したって聞いたぞ!」
俺に絡みがいが無いと分かったら、公爵姫はすぐに違うやつを発見。
それは黒服連中に飲まされて真っ赤になったズレータだ。公爵姫はズレータへ絡みに行く。首に手を回されて、ズレータは真っ赤だ。あいつ、意外と純情かよ。
しっかし、見てて清々しい絡み酒だな。
「——俺なんて本当に何もしてなくて。ウィンフィールドが考えていた通りのことを実施したままで! 全部、ウィンフィールドのお陰っていうか」
ズレータが酒を飲みながら、演説みたいに叫んでいた。
いやいや俺のこと上げすぎかって。
俺はどこからか手配されたふかふかのソファに座って、ズレータの痴態を見つめる。あいつ、明日は二日酔いに苦しむだろうなあ。
「そう自分を謙遜するな、ズレータ! お前の功績も無視できない! エバンスの野郎、怖かっただろ! あいつ、冒険者時代はヤンチャしてたからな!」
「怖いものなんてもんじゃなかったです! 俺のこと、殺す殺すって! あそこまで凄まれたのは生まれて初めてでした!」
「うはは! ズレータ、お前は活躍したからな、私は頑張りには褒美を与えまくるタイプだ。聞け、ズレータ! 明日からお前の冒険者見込みランクを1つ……2つ……いや、3つ上げてやる!」
「ひ、ひとつじゃなくて、2つ!? って、ええ、3っつですか!?」
うわあ、公爵姫。大盤振る舞いだな。
ランクが3つ上がるとはイレギュラーもいいところだ。本来、冒険者見込みランクってのはこんなほいほいと上がるもんじゃないんだ。
学園の外じゃ、冒険者見込みランクは冒険者ランクと同じ扱いされるからな。
でも、これが許されるところが公爵姫の権力の大きさを表している。
「このまま精進し続けろよ? 期待しているからな」
頭をぐりぐりと押さえつけられてそれでもズレータはうれしそうだった。
ズレータの見込みランクが3つ上がる、明日には知れ渡るだろう。ズレータを追い出したマリアの冒険者パーティ連中はどう思うだろうな?
ミサキも楽しい雰囲気を味わって機嫌が良さそうだ。
俺も何だかんだ頭の中がふらふら。黒服連中も大半が潰されていた。こわいなあ、ユバ・ホーエルン。この人の護衛になったら肝臓が幾つあっても足りないよ。
「それよりおい、ウィンフィールド。お前の奴隷はなんで潰れない。どんな体してるんだ」
「公爵姫が、ウィンに何か話があるのは見え見えだから――」
「ふうん。ただの奴隷じゃないって報告は受けていたけどな」
公爵姫はしげしげとミサキを眺める。
ミサキは魔王軍の魔王だ。あれしき飲んだぐらいで倒れる身体はしていない。
「まぁいい。同じパーティめんなら聞かれて困る話じゃないし、頃合いだな?」
公爵姫は一階にいた大半が潰れていることを確認して。
「ウィンフィールド、大人の話をしようか。今回、私が与えたお願い達成の褒章として、晴れてお前は冒険者見込みランクが10から9。一桁となる。私が何を言いたいか、説明は必要か?」
「いえ、噂は知ってます。何でも俺の願い叶えてくれるんですよね?」
「よしよし、面倒な手間が省けて私は嬉しいぞ。何でもといっても出来る範囲だがな、大抵のお願いは叶えられると思うぞ?」
このホーエルン魔法学園では冒険者見込みランクが一桁になった学生に対して、公爵姫との面会が与えられる。
面会ではこのように、公爵姫直々に何でも好きな願いをかなえてくれるんだ。
「それじゃあ、ウィンフィールド。お前の望みはなんだ?」
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【読者の皆様へお願い】
天は二物を与えました? ートリアの日常、黎明魔法学園にて――
https://kakuyomu.jp/works/1177354054896506425
女の子が主人公な新作を書いてみました。
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