歩く公開処刑人と嫌われる完璧すぎる姉貴が恋しているのは俺か?それとも兄貴か?
月花
第1話「しーちゃんとれいちゃんはメイの宝物」
胸がGカップ、くびれていて、お尻と太ももがほどよく肉付いている。顔はちょっとたれ目な大きな瞳でいつもウルウルしていて、厚ぼったい唇、肌は真っ白ですべすべしている。上品でどこか色っぽくて儚い印象を与えて、でも性格は内気で優しくて頑張り屋で、いたずらすれば「もう!」と本気になって、「ちょっと甘いもの食べたいなあ。買ってきて」ってかわいいわがままを言って、自分にだけ弱みを見せてくれる。だけど男が泣き言を言えば「がんばってるじゃん。大丈夫だよ」なんて勇気づけてくれて、最終的には「私があなたを幸せにしてあげるから心配しないで」なんて逆プロポーズしてくれる。そんな20代半ばすぎくらいのきれいなお姉さん。オタクだって現実にそんな女がいないってことはわかってるはずだ。
だけどな、いるんだよ、俺の近くに。すっげー近くにいるんだよ。困ったことにな、俺の姉貴なんだよ。
葉村三きょうだいっていえばこのあたりじゃちょっと有名だ。長男は羽村将太朗、いつも陰気な目をして背も高いから小さいころから女に嫌われるどころか怖がられているような存在で、25になった今でもいまだ彼女なし…だと思う。次男はこの俺、羽村玲。今年大学を卒業した新卒社会人、なんとなく声をかけられることもあるから兄貴よりはモテるんだろうけど、実際は女と付き合ったことはない。そして将太朗と俺の上に姉貴がいる。羽村メイ。御年27歳、この姉貴がさっき書いた完璧すぎる俺の姉貴だ。姉貴は小さいころから異常にモテていて、最近では歩く公開処刑人なんてあだ名をつけられるほどの美貌の持ち主だから、女友達はいまだにいたことがない。そのせいもあって、小さいころから俺と兄貴とばかり遊んでいた。もちろん、俺も兄貴も「お姉さん紹介してよ」なんて一度も話したことないクラスのパリピ集団に何度声をかけられたかわからない。姉貴は昔から女に嫌われまくっていたせいもあって自分に優しくしてくれる人はみんないい人、しーちゃんとれいちゃんと仲良くしてくれている子はみんないい子みたいな自動変換機能が脳についているから、俺たちだってそうやすやすと姉貴と面会させるわけにはいかなかった。
姉貴の伝説は数々ある。
下着を盗まれるのは高校生のころから日常茶飯事、就職先の男全員が恋をして女部長に目をつけられて退職に追い込まれたり、内気で内省が趣味の姉貴が行きつけのカフェをみつけてもそこに通う男が増えすぎていつのまにか居心地が悪くなったり、美容院に行けば必ず男の美容師にアプローチされる。ストーカー被害は俺と兄貴の鉄壁の守りのおかげか在宅ワーカーになってからは一度もない。
オヤジもおふくろもいまだ新婚か?ってくらい仲が良くてふたりで旅行に行くことが小さいころからよくあったから、そんな環境も俺たちの結束を強くしているのだと思う。だからこのあたりで「葉村三きょうだい」っていえば、美人な姉貴に金魚の糞みたいに陰キャの弟が護衛しているって有名だ。あの陰キャたちのせいで俺たちは彼女に近づけないって言われてるってことも俺たちは知ってる。そしたら、姉貴がこう言い放った「しーちゃんとれいちゃんのかっこよさと優しさがわからないなんて世の中はクソなのよ。メイにとってふたりは何よりも宝物だからね!」そう言って俺たちを満面のかわいいほほえみと共に抱きしめてくるんだから、まあ、世の中が見ている以上に姉貴は魔性の女なんだよな。
歩く公開処刑人と嫌われる完璧すぎる姉貴が恋しているのは俺か?それとも兄貴か? 月花 @iseeyou10
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