第6話 教授への道

霊仙三蔵、3匹の神獣と安倍晴明を道場の教授にしようと目論んではいるが、斉天大聖と安倍晴明が突出していたため、足並みが揃わない。

霊仙三蔵、考えあぐねて、孫悟空と安倍晴明を自室に呼んだ。

霊仙三蔵の相談を聞いた悟空と晴明、2人で協力して、八戒と悟浄の進化修行を手伝うことにした。

そうして1年ほど過ごしたある日、晴明と悟空はなぜか悟浄を誘って山の台地と呼んでいる広場から夕焼けを見ていた。

本当に何気なく。

自然に晴明と悟空の声明が、辺りを包み、ふと見ると霊仙が微笑みながら3人を見ていた。

次の瞬間、天から強い光が降り注ぎ、沙悟浄を包み込んだ。

光が和らいだ時、沙悟浄の顔と装束が摩梨志天のものに変わっていた。

悟空は、また号泣している。

今回は、神馬となった玉龍も泣いている。

玉龍が沙悟浄に近付いて。

『悟浄・・・

 俺に乗れ・・・

 祝に飛んでやる。』

玉龍からの精一杯のお祝いだった。

寄宿舎への帰路。

龍神池と呼んでいる池の傍らの祠の前にうずくまって泣いている八戒。

肩を震わせながら。

『悟浄・・・

 良かったなぁ・・・

 頑張ってたもんなぁ・・・

 おめでとう。』

八戒も、号泣していた。

『ありがとう・・・

 ありがとう八戒・・・』

そう言って、沙悟浄が八戒の肩に手を置いた瞬間、またまた天空からの強い光が降り注ぎ、今度は八戒が光に包み込まれた。

悟空と晴明と悟浄は、ワクワクしながら、見守っていた。

猪八戒のトレードマークとなっていた、黄色い中華服が天衣に変わっていた。

顔を上げた八戒、なんと不動明王に進化していた。

斉天大聖孫悟空は、毘沙門天。

倦廉大将沙悟浄は、摩梨志天。

天峰元帥猪八戒は、不動明王。

天馬ペガサスの玉龍に加えて最強の陰陽師、安倍晴明。

道場主は、三蔵法師霊仙。

密教の道場としても、修験道や忍術の道場としても、ありとあらゆる術の道場として、最高の指導者が霊仙の道場に集まった。

『今日より、この道場を龍門

 館と名付けることとする。』

またまた、しば漬けで酒を酌み交わしながら、上機嫌な霊仙。

龍門館で教える教科を、何にするかを、酔っ払いが考えている。

陰陽道と修験道を組み合わせた術を忍術と名付けた。

妖術・幻術・密教・棒術・槍術・剣術の七科目を考えたが、教授が5人しかいない。

忍術と密教が晴明。

妖術と幻術を悟空。

棒術と槍術と剣術を八戒と悟浄が受け持つことにした。

近江の国、佐々木源氏の支援を受けて出来た龍門館である。

龍門館の所在する近江の国南部は、佐々木源氏の六角氏が守護職で、六角氏の家老である望月家が領主であった。

望月家が分家共々治める地域を甲賀と呼んでいる。

龍門館に学ぶ子供、若者は甲賀衆と敷地が少し伊勢の国阿山にはみ出ることを許してくれた。伊勢の国伊賀上野領主、服部家の子供と若者を中心にすることとなった。

時は、鎌倉幕府が出来て数年。

龍門館道場千年の歴史は、こうして始まった。

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Dragon Gate(ドラゴンゲート・龍門館) 近衛源二郎 @Tanukioyaji

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