信じる思い
「どうしました?」
「報告します。右翼後衛高機動部隊、すでに敵第2陣の合流阻止のために動いているそうです」
「なんですって?」
「部隊長のルドルス3級とランパック3級の判断だそうです」
その報告を額面通りに受け取るなら独断専行ということになる。おそらく先行行動を決断したのはドルスだろう。だが――
「了解です。事後ですが承認すると伝えてください」
「了解、打伝します」
私はドルスの決断に感謝していた。そして、彼に独立高機動部隊を託したのが間違いでないことを確信していた。
「たのむわよドルス、――たのむわよみんな」
これで反転攻勢への布石は全て打ったことになる。あとは互いの総力をぶつけ合うのみ――否――
「まだあった! フェアウェル、左翼後衛弓兵部隊に打伝してください!」
「了解」
「伝聞――弓兵部隊は小隊規模に別れて散開、直接戦闘を行う右左翼前衛、及び、中翼の支援へと移行してください! さらに左翼後衛部隊長に下命! 『敵指揮官を捕捉し逃走を阻止! 可能な限り生け捕り!』」
「了解! 打伝します!」
そして彼女は左翼後衛の弓兵部隊へと打伝する。そして部隊長であるバルバロンへと下命文を伝えた。
「敵指揮官を補足し逃走を阻止! 可能な限り生け捕りせよとの事です」
先方からは了解の返答が来ているだろう。
「返信了解! ご武運を!」
通信師の彼女が私に告げる。
「伝達完了、下命受諾しました」
「ご苦労様、次指示あるまで待機して」
「はい」
今、打てるべき布石は打った。あとは結果を待つのみだ。その時、傍らのアルセラが言った。
「あれは一体?」
火柱が吹き上がる。それとともに
「
「それって一体?」
アルセラの問いに私は答えた。
「火薬を用いた兵器の総称です。棒の先や筒状のツボに火薬とともに鉄製の矢じりを装填し点火して攻撃します。原始的ですが、歩兵相手なら威力は侮れません。鉛玉を用いるマッチロック銃やフリントロック銃と違い一般的な鉄製の矢じりを用いますので並の装衣では貫かれてしまう」
私の説明にアルセラが不安を口にする。
「皆様、大丈夫でしょうか?」
尤もな不安だった。だが私はこう答えるしかない。
「信じるしかありません。参戦してくれているすべての人々を」
そう――、指揮官とは信じる者。
自軍の勝利を、そして、味方の兵士たちの勝利を――
「頑張ってみんな」
私の口からはそんな言葉が漏れていた。
そんな生易しい言葉が出てしまうのは、わたしが指揮官としてはまだ甘いからだろう――、そんなふうに思っていた。
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