誰かの役に立てる
「ありがとうございます。ファミューレさんとお話して少し気が楽になりました」
リセイは立ち上がってそう言って深々と頭を下げた。するとファミューレも、
「よかったぁ♡ 私、お役に立てたんだね♡」
と嬉しそうに微笑んだ。色香の塊のような体つきをしているのに、その表情は、親に褒められた子供のようにあどけなかった。
実際、ファミューレにとっても、
『誰かの役に立てる』
というのはとても嬉しいことだった。彼女自身が言っていたように、仕事の覚えが遅くて要領が悪くて他人に迷惑を掛けてしまっていることをいつも悔やんでもいた。
だから、自分の言ったことでリセイが元気になってくれるなら、とても喜ばしい。
リセイが救われたことで彼女も救われたのである。
それは、この社会の成り立ちそのものでもあった。
魔獣や魔王といった大変な脅威がいる厳しい世界で、互いに力を合わせて生き延びようとする社会の。
そしてリセイは、登庁したルブセンに申し出た。
「僕を、兵士として使ってください。僕も魔獣と戦います!」
と。
その彼の申し出に対して、ルブセンは毅然とした態度のままで、
「いいだろう」
端的に受け入れる。
しかし、ホッとするリセイに対し、ルブセンは続けた。
「正直、私はお前を疑っていた。いや、今も疑っている。お前がベルフやアムギフを連れてきたのではないかと」
「……!」
容赦のない指摘に、リセイの顔がみるみる青ざめる。そんなリセイをルブセンは真っ直ぐに見詰めつつ、
「だが、お前が魔獣を倒すことで身の証を立てるというのなら、私はそれを認めよう。見事、魔獣を撃破し、己の潔白を証明して見せよ」
と言い切った。
それを、秘書官の女性が心配そうに見ている。
「では早速、今日からお前も鍛錬に励むがいい。いずれ正式にライラが率いる第二隊に配属することになるが、今は皆、療養中だからな。仮ではあるが第七隊にお前を配する。そこで鍛え上げてもらえ」
自身に与えられた<指示>に、
「はい!」
と右の拳を左胸に当て、リセイは応えた。ここでの敬礼を見様見真似で再現したものだったが、今の彼にとってできる一番のものだった。
こうして、リセイは早速、
「仮にだけど皆さんと一緒に鍛錬を行うことになったリセイくんです。仲良くしてあげてください」
ファミューレに案内されて、鍛錬中の第七隊に紹介された。
「よろしくお願いします!」
やはり見様見真似の敬礼をしながらリセイは精一杯の声でそう言った。もっとも、明らかに腹に力が入っていない、いかにも頼りないそれでしかなかったが。
しかし、第七隊の隊長である、ベテラン騎士<ドルフット・バーキマンス>は、少し白髪も混じり始めた短髪の頭をガシガシと掻きながら、
「うちの隊は厳しいぞ。お前は本来第二隊に入るそうだから今は<お客さん>だし手加減はするがな」
と、岩のような印象のある顔をほころばせたのだった。
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