ベルフ捜索

現代地球の先進国においては、年齢によって成年・未成年を分けている。


これは、平等に選挙権を与えるためにはある種の合理性もあるものの、およそ<大人>とは言えないような者まで大人として扱うことになるという面があるのも事実。


一方、今、リセイがいるこの世界では、先程も触れたように『できること・できないこと』によって成人かどうかが判断される。


とは言え、最低限の年齢というのはあるので、それ以下であればたとえ成人とし認められる能力を有していてもさすがに大人とは認められない。


で、この国ではそれが十五歳(数え)というわけだ。なので満年齢で言うとだいたい十四歳ということにはなるが。


ちなみにリセイは満十六歳なので、数え年で言うと十七歳ではある。つまり、ライラは今のリセイと同じ歳で<大人>になった。


なお、トランは現在十五。満年齢だと十四なので実はリセイよりも二歳年下というわけだ。


ティコナは十六(満十五歳)。


とは言え、年齢そのものはさほど重要ではないので、参考程度に捉えてもらえるといいだろう。




それはさておき、馬車に揺られること一時間ほどでマルムの森に着いた。


「リセイ、お前がベルフと遭遇した場所は覚えているか?」


ライラにそう訊かれたものの、


「ごめんなさい。よく知らない場所だったし慌ててたから、覚えてません」


と応えるしかできない。実際、覚えていなかった。


が、だいたいの場所についてはティコナが証言していたので、リセイに訊いたのはティコナが告げたそれと違いがあるのかどうかというのを確かめようとしただけで、あまり当てにはされていない。


だから、


「そうか。ならいい」


ライラも素っ気ない。


レイに『お前の息抜きに利用してやれ』とは言われたものの、さすがにそうそう切り替えはできなかった。


『やれやれ。ホントに不器用な奴だ……』


そんなライラの様子に、レイは口には出さずにそう肩を竦めた。


しかし取り敢えずはあたたかく見守ろうとは思っている。


そんなこんなで、藪を掻き分けながら慎重に進み、ベルフの捜索を行った。


が、マルムの森は基本的に子供がお遣いでも来れるような場所であり、それほど危険な獣はいない。


精々、野兎に似た小型の動物が藪から飛び出して逃げていくくらいだった。


さりとて、こういう山歩きには慣れていないリセイには厳しい作業であることも事実。


傍から見ていても動きが完全に素人で、とても昨日のとは同一人物には思えない。


格闘術については、蟷螂拳の入門書を読み漁ったことに加えアニメなどを見ていたことである程度のイメージはあったものの、こんな地味な<山狩り>については何の知識もなかったことで、まったく動きをイメージできなかったのだった。


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