俺の従弟
こうしてライラの部隊に仮配属されたリセイは、早速、ベルフ捜索に向かうことになった。捜索は三つの部隊が日替わりで行っている。
『そこまで丁寧に捜索するってことは、それだけ魔獣を警戒してるってことなんだろうな』
簡単な説明を受けてリセイはそう思ったが、のんびり感心している暇はなかった。
「急げ! ぐずぐずするな!」
ライラの指示を受け、兵士達が二台の馬車に分乗する。
彼女の隊は、ライラとレイを含む五人の<騎士>と、十八人の<兵士>で構成されていた。
騎士達はそれぞれ馬に騎乗し、兵士達は馬車に乗って<マルムの森>へと向かう。マルムがたくさん採れる森だから<マルムの森>なのだが、
『そのまんまだな…』
リセイは少し可笑しさを感じてしまっていた。
するとそれが顔に出ていたのか、
「お前、ホントに余裕だな」
リセイの正面に向かい合って座っていた兵士が呆れたように言う。
「あ、ごめんなさい…!」
これから任務に赴くというのに不謹慎だったかと思い、リセイは素直に謝った。
しかし、
「いや、別に怒っちゃいないんだけどさ。マジで図太い奴だなって感心してんだよ」
兵士は笑った。
「まったくだ!」
「お前みたいなガキは初めてだぜ」
他の兵士も笑顔で声を上げる。
「そうなんですか…? すいません、僕、よく分からなくて…」
リセイは少し困ったように頭を掻いた。そんな様子にも、正面の兵士は言う。
「こうして見ればホントにただのガキにしか見えねえのにな。トランの方がまだ大人に見える」
「え…?」
思いがけない名前が出て、リセイは少し焦った。
するとその兵士は、
「トランは俺の従弟だよ。腕は立つんだが頭の出来は少々あれなんで、ちょっと心配してるところだけどな」
と笑う。
「あ、そうなんですか…!」
さすがに何と言っていいのか分からなくて、気まずくなる。
が、その兵士は、
「まあ気にすんな。あいつも最近、ちーとばかり調子に乗ってきてたからな。そろそろお灸をすえてやらなきゃと思ってたところなんだ」
やはり笑顔のままで言った。
そんな様子にリセイも少しだけホッとする。
「でも、あいつは少々しつこいところもあるからな。お前をこうして俺達の隊に入れたのは、トランから引き離すためっていうのもあるんだろうな」
「その辺り、さすがルブセン様だよ。余所者に罰を与えるって言いつつ、こうやって引き離してトランの奴に頭を冷やさせようとしてるんだと思う」
「ああ。俺達の隊にいれば手出しもできないしな」
兵士達が次々とルブセンの意図を説明してくれて、
『へえ、そうなんだ……!』
と、内心、感心してしまっていたのだった。
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