「見だぞ・・・」
低迷アクション
第1話
どんな小さな悪事を働くでも、隠蔽するでも、なるべく人目につかない所で行うモノだ。
その日“S”は、学校で起きた友人との些細な喧嘩でイラつき、帰り道から少し外れた
ドラッグストアで化粧水を1つ万引きした。
一種のストレス発散のつもりで行った行為だが、実際に行ってみると“盗品の始末”に
非常に困った。仮に部屋に置いても、母親が掃除をする時に見つかるもしれない。
また自身が身に着けていても、普段使わない種類の化粧品のため、友人達に誤魔化すのも
面倒だ。そんな考えを持ち、視線をさ迷わせた彼女の目に通りから離れた丘にある墓所に目が止まった。
(あそこなら…)
夕刻が迫り、暗くなった道を足早に進み、黒い墓石が並ぶ場所に足を踏み入れたSは
なるべく奥にあり、お供えの品が多そうな墓を見つけると、そこに化粧水の小瓶を置いた。
勿論、辺りに人がいない事を確認してである。こうすれば、お供えの品に紛らわして、
自身の悪事がバレる事はないと思った。
だが、最後まで気を抜いてはいけない。Sはゆっくりと墓所の入口に向かって、歩を進め、
通りの人気を見た後、何気ない感じで歩き出した。
「見だぞ…」
最初は気のせいかと思った。そのまま歩こうとするSの耳に…
「見だぞ、見だぞ、見だぞ…」
と言う、しわがれて不明瞭な声が、いくつも響いてくる。恐ろしくなった彼女は、
声を振り切るように走り出す。
すると、まるで、それを追いかけるように墓所の中から重い石を引き摺るような音が
響いてくる。
やがて、不気味な声と音が耳元近くまで響いた時、彼女の腕を冷たく固い何かが掴み、
その手に小さなモノを握らせ、一際強い声で言った。
「見・だ・ぞ」…(終)
「見だぞ・・・」 低迷アクション @0516001a
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