第11話
朝になれば渋滞が生まれ出ずる。
この街に住む人間であれば誰もが理解している現象だ。それはつまり、
「おはよう、子猫ちゃんたち! 今日もみんななんて美しいんだ!!」
「きゃぁぁ! 蘭王子ぃぃ!」
「こっちを、こっちを向いて蘭様ぁぁ!」
「写真を! どうか写真だけでも!」
「はぁはぁ! 蘭様っ! 蘭様がっっ、ウッ!!」
倒れた一人を救急隊員が慣れた手つきで搬送していく。うっかり原因を見てしまわないようにサングラスをかけたせいで怪しい恰好になっている隊員の皆さま。
「結局飲んだんやな、中和剤」
「おはよう」
「おはようさん、はぁ……」
「珍しく賭けに負けたな」
「あれのことでお前と賭けしよう思うた自分が情けない」
「挨拶」
「おっす、祐介」
一緒に登校していることになっているが、その実態として蘭の姿は取り巻きで隠れて見えはしない。黄色い声が上がり続けているのでまだその辺に居るのだろうけど。
「入院」
「ああ、そうそう。今宮と……、ええと、あのなんか隣の奴やねんけどな」
野田でヤンスぅぅ! と風が聞こえてきたのは気のせいだろう。
「全治三か月で入院やって。なんでもどこぞのクマに襲われたとか恐竜に噛み殺されたとか」
「入院なら殺されてはないだろ」
「なぁ、どこぞの」
「なに」
「ホンマにあれで良かったんかな……」
ハーレムを抱える蘭を見つめる幼馴染は、寂し気で
「気にするなよ」
「あ?」
「あの時初めて名前を呼ばれたからって、別段蘭はしっかりお前のことを特別大事に思ってるから」
「…………」
「梅干し」
「図星と赤い顔でか、上手い」
「どタマ勝ち割ったろかボケがァ!!」
カバンを振り上げる真奈美の一撃は祐介に任せるとして、僕は慣れ親しんだ黄色い悲鳴を背中に浴びて、いつも通りに学校へと向かうのだった。
――FIN
イケメンちゃんは呪われている @chauchau
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