第11話二人だけで見る花火大会《終》

夏休みも終盤になった花火大会当日。

午後5時過ぎ、弟が家を出ていく。

数日前に弟を花火大会に行こうと誘ったにも関わらず、先約があるとかで断られた。

口には出さないけど、苗木ちゃんと行くような様子がうかがえた。

弟に避けられている気がして、落ち込んでいる。

正直、見川君に誘われているが弟に誘いを断られたことがショックすぎて、外に出る気すら起きない。

ソファで寝転がっていると、インターホンが鳴り出した。

無視していると罪悪感が増していき、玄関扉を開けに小走りで急いだ。

玄関扉を開けると見川君の姿があり、気まずい。

「倉見先輩。寝てましたか?寝ていたならすみません。断るなら一言断りを言ってくれるのに、何もなかったので嫌われているかと思ってました」

「ね、寝てなかったけど......落ち込んでて、出るのが億劫だったというか......ごめんねっ!嫌ってないよ、見川君のこと。見川君を失望させちゃったよね、私に構わずもうっ──」

「失望なんてしてないですよっ!倉見先輩の全てが好きなんですから。誰にだって落ち込むことはありますし、倉見先輩のことなら悩み事でも何でも聞きますし、泣いていたら泣き止むまで傍に居たいって思ってるほど好きです。大好きで倉見先輩の全てを受け入れられますっ!だからっっ構わず何て言わないでください!」

私の言葉を遮って彼が想いの丈を叫んだ。

「......えっと、あっ、ありがとう......そんなふうに思ってくれてたんだ。今さらだけど......一緒に行ってくれる、私と?見川君」

「はぁっ、ふっうぅ、はぁはぁ......そのために倉見先輩を訪ねたので」

叫んだ直後の彼は荒い息ながらも返事をしてくれた。


途中、浴衣のレンタルが出来る店を見つけた彼が浴衣を着た私を見たいと言い出して、浴衣をレンタルして浴衣姿になる。


屋台がずらりと並んだ目的地に到着した私達は、人の多さに圧倒されていた。

人だかりができている屋台の周りを目指し歩きだした彼が突然、手を繋いできた。

「はぐれて何かあったら見川君にあわせる顔がなくなるし、先輩の悲しむ顔を見たくないから」

「う、うん。ありがとう......」


屋台で焼きそばとたこ焼きをおごってもらい、人だかりから離れたベンチで花火がうちあがるのを待った。

「履き慣れてないのにごめんなさい。こういうのに憧れてたんです、先輩はどうですか?経験ありますか」

「大丈夫だよ。無いよ、男子と花火なんて。見川君とが初めてだよ、ありがとう......見川君」

「そうなんですか。あのっ付き合ってほしい......ですっ!無理で、すか......?」

「......いっ、良いよ。見川君となら付き合ったら楽しそう......だから」

彼の告白に返事をした直後、花火が夜空を照らした。


まるで今の私の胸の内に広がっていく色のように彩られていく夜空が輝き続けている──


《終》

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桜が散るとき 闇野ゆかい @kouyann

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