第4話
「碧生、またコンビニのパン?」
海人が僕の昼ごはんのメニューを見て言ってきた。
因みに海人は今日は父親の手作り弁当だ。
「そんなんで栄養足りてんのかよ」
「栄養なんてなくたって生きていけるよ。人間に必要なのは愛だろ」
海人が吹いた。
「碧生、頭、大丈夫!?そんな事言うキャラじゃないじゃん!!」
僕は笑った。
「大丈夫だよ、冗談だって」
「晴山君」
苗字で名前を呼ばれ振り向くと、速水まどかがいた。
「何?」
「これ、あげる」
速水まどかが僕に紙袋を渡してきた。
「サンドイッチ。ウチのパンだよ」
僕は紙袋を受け取った。
「ウチのパン?」
「ウチ、パン屋なの。それ、食べて。一応手作りだから。じゃあね」
速水まどかはそう言うと去っていった。
速水まどかの隣にいた女友達が、いいの?お昼どうするの?と聞いていた。
僕はポカンとしてしまった。
「良かったね。てか、速水さん家、パン屋だったんだね。僕、知らなかった」
海人はうまーと言いながら自分の弁当を食べている。
僕は立ち上がった。
「速水さん!」
少し遠くにいる速水まどかが振り向いた。
「ありがとう!」
速水まどかは、ニコッと笑った。
それと同時に僕の心が飛び跳ねた。
「速水まどかって、笑うんだ……」
「何言ってんの、碧生?当たり前じゃん、人間だもん。やっぱ今日おかしいよ。早退したら?」
「うるせえよ」
サンドイッチはどれも美味しかった。
僕は手作りのものに飢えている。
母は今も手作りしてくれる。
だけどもうそれらは僕の糧にはならないのだ。
僕は席を立って速水まどかを追った。
「速水さん!」
「晴山君……サンドイッチどうだった?」
「とても美味しかった。それで、お願いがあって」
「何?」
「毎日、手作りの何かを持ってきてほしい!」
「え?毎日?そんなに美味しかった?」
「美味しかった」
僕は嘘をついた。
サンドイッチの味は普通だった。
だけど誰かの手作りのものが食べたくて嘘をついた。
「でも何で私が?」
そうだ、何で速水さんが僕の為に毎日何かを作ってこなきゃならないんだ。
「ごめん。やっぱり……」
「嘘、嘘。いいよ」
「え?」
嘘だろう。
何の義理があってそんな事するんだ。
僕は自分で頼んでおきながらそう思った。
「だから、いいよって。何でもいいんでしょう?」
何でもいいと言われると少し怖くなった。
何を作ってくる気だろう。
するとそんな僕の心を読んだかのように速水まどかが笑った。
「怖がらなくても大丈夫だよ。ちゃんとお弁当作ってくるから」
僕は赤面した。
僕の考えている事が全てバレている気がして。
「じゃあ、またね」
そう言った彼女に僕は手を振った。
Blue ひろ @hirose0308
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Blueの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます