大黒ふ頭で虹を見て、それから
1月11日
予定通り眞紀と待ち合わせ東名高速で箱根へ向かう
眞紀の報告は未だない
いつも通り取り留めのない話しや、僕への“桃ちゃん”攻撃はしてくるが適当に受け流していたら張り合いがないのか、いつしか眞紀はカーラジオに合わせて歌っている時間が多くなっていた
昼前には芦ノ湖についていたので、遊覧船に乗ったりしながら昔のように過ごした
三年以上デートをしていなかったが、全くブランクを感じる事なく頻繁に逢っている恋人同士のように違和感などなかった
5時には宿に着き、温泉を楽しんで食事を取り、卓球で汗をかいたので再度温泉に入った
しかし、眞紀からの報告は何もないままに一日を終えようとしていた
僕から切り出すことは絶対にしない
これが僕の定めた今回の旅行のルール
そもそも僕は眞紀の離婚を知らない体なのだ
知らない者から一体何を切り出す事があるのだろうか?
ついに灯りを消し
僕は眞紀を求めた
すると眞紀が遂に本題に入る
眞:待って・・・
僕:うん
眞:ごめん、ずっと言いたかったけどタイミングなかったから・・・
僕:うん、いいよ
眞:私も言わなくちゃいけない事があるの・・・
僕の腕の中で眞紀が話し始める
僕:眞紀も・・・なのね?
眞:うん
眞:私も今は自由なの
僕:そうか
眞:うん
眞:驚いた?
僕:少し
眞:少しだけなの?
僕:うん、少しだけ
眞:なんで?
眞:もっと驚くでしょ?
眞:それに何故自由なのか知りたくないの?
僕:だって、今回割と自由に旅行付き合ってくれたし
僕:自由になってる事もあるかもしれないと思ってたから
眞:するどいね・・・
眞:て、言うか嘘つきだねw
なるほど・・・
斎藤さんが教えた事を知ってる訳ね・・・
僕:嘘つきだよ
眞:あら、簡単に認めるんだ
僕:嘘つきだけど、お前も人が悪いよ
僕:魔性っぷりは健在だねー
眞:知ってるのに知らないふりしたりするのは、どうなのよ?
僕:それは時系列まで聞いてないけど、お互い様じゃないの?
眞:・・・そうだけど・・・
僕:僕も言わない事で気を使ってたし、お前もそうでしょ?
眞:そうだけど・・・
眞:お前なんて言う人だったの?
僕:言う人になるよ。嫌かな?
眞:いい、私も言う人になるからw
私もだと?
僕:僕はお前って呼ばれるの?
眞:違うわ
眞:アナタw
僕は眞紀を抱き寄せ
僕:生意気な小娘は黙らせるしかないね
眞:バカ・・・
僕と眞紀はそのまま朝を迎えた
カーテンから差し込む光で照らされる眞紀は今まで通りに綺麗だった
眞:おはよう
僕:うん
眞:昨夜の続き話していい?
僕:眞紀がそうしたいなら
眞:ありがとう
眞:理由とかいろいろ話しておいた方がいいよね・・・
知りたくないと言えば嘘になる
でも、話したくない事を言わせたくもない
僕:必要ないよ
眞:え?
僕:そのうち昔話になった頃に聞くよ
眞:それでいいの?
僕:問題ない
眞紀は安堵したような顔をしていた
眞:ありがとう
僕:僕にとって重要なのは、今眞紀が自由であると言う事実だけ
僕:そこに至る過程は眞紀が話せる時に聞かせてもらうよ
眞:そうする
僕は斎藤さん情報が正しいのであれば、離婚の理由は知っていたが、眞紀に話したくない理由があるならそれでいいと思った
仮に眞紀に非があったとしても構わない
眞紀がどんな悪女であろうとも、僕に対して真摯でいてくれればそれでいい
極論を言えば、性格が悪いからという理由で同性に嫌われていたとしても、僕を愛してくれるならそれでいいのだ
眞:これから私達どうするの?
僕:今日の午後の予定を確認してる訳じゃないよね?
眞:うん、ちがいます
僕:うんちがいる?
眞:ふざけないで!
ちょっと怒った眞紀も可愛いが、今はふざけている時ではなかった
反省だ
僕:一緒に住むとか、籍入れちゃうとか?
眞:まぁ、それ的な事
僕:じゃあ籍入れて、一緒に住むか?
眞:え?いきなり?
僕:うん
眞:それは難しいかなー
僕:何故?
眞:娘もいるし・・・いきなりはキツイ
僕:そうだよね、じゃあ現実的な事言うよ
眞:こわいわw
僕は浴衣の帯を締めなおして
僕:まず僕は眞紀に、正式なお付き合いをお願いします
僕:お願いします!
頭を下げながら右手を差し出す僕
その手を取って眞紀
眞:はい、こちらこそ
僕は眞紀を抱き寄せて
僕:これで正式にカップル成立ね
眞:うん
僕:夢が叶った
眞:うれしいの?
僕:最上級に嬉しいよw
僕は眞紀の肩を両手で押さえて、少し間をあけながら続ける
僕:娘さんの都合も眞紀の都合もあるけど、横浜に引っ越してこれる?
眞:相談するけど、多分大丈夫
眞:娘も東京で働きたがってるし、私は仕事は何でもいいの
僕:ありがとう、流石に僕は今から仕事変えて越せないからね・・・
僕:娘さんとの相談次第だけど、これで遠距離恋愛回避だね
眞:なんか理論的過ぎて・・・わかりやすいけどw
僕:ごめん、こういう言い方しかできないんだ
眞:知ってるよ、慣れたw
もっとソフトに話せば良いのだろうが、感情のまま話すと僕はこうなってしまう
僕:そこから先は眞紀と娘さんの問題かな
眞:うん
僕:眞紀が望むタイミングで娘さんには許しを請うよ
眞:わかった
眞:ところで貴方の方はお子さん平気なの?
僕:うちは全然平気、寧ろ嫁を貰えと言われてるよ
眞:そうなんだ、男の子って逞しいわね
僕:そうでもないけど、この件については理解あるよ
僕は緩んだ顔を気合で引き締めて
僕:クリアする問題はあるけど、全部クリアできたら結婚しよう
眞:うん!
眞紀は100万$の笑顔だ
眞:それと結局貴方、私を眞紀って呼んでるの気付いてた?
僕:え?
眞:無理して、お前とか言ってたんだねw
僕:そうなのかな・・・
眞:可愛いわw
僕:う・・・
急に形勢逆転されたようだ
眞紀に余裕ができた
眞:でも結婚すると大問題が発生するのよねw
僕:大問題?
眞:そう
眞:貴方と結婚すると私・・・
眞:ノリマキになるわ・・・
僕:野里眞紀だからノザトマキだよ
眞:そんなの読む人はノリマキって読むわよ
僕:確かに、僕もノリヨウイチって何度言われたかわからんし・・・
眞:だからノリマキなのw
僕:それは大問題なのかな?
眞:もちろん大問題よ
眞:だって・・・
僕:だって?
眞:ノリマキなんて可愛いじゃないのよw
僕:ソウダネ・・・
僕:カワイイネ・・・
僕:キレイダネ・・・
僕:ケセランパセラン・アブダカダブラ・・・
眞:あっ・・・壊れたw
本当に眞紀が近所に越してくるかどうかはわからない
でも、僕の差し出した右手を眞紀はしっかりと受け入れた
僕の想いは遂に眞紀へ正式に届いたのだ
自由な立場の僕と眞紀
これから親密が増せば、良くない事もお互いに見えてくるだろう
些細な事で怒ったり喧嘩もするだろう
でもそれはどうでも良い事なのだ
それも含めて、僕は思い続けた女性をついに射止めたのだ
眞紀との全ての想いでよりも、これから起こる未来への期待が数段デカい
だって一緒にいられるんだよ?
わかる?
これって凄い事なんだよ?
この日、僕は初めて神に感謝をした
マリーンルージュで愛された僕
今度は、大黒ふ頭で虹を見て
そして、その続きもすべてサザンの歌の通りになるまで
勿論なった後も
眞紀と一緒だ
大黒ふ頭で虹を見て 小川三四郎 @soga-bee
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