4.一方そのころの、元王女――悲劇。







「ぎゃあああああああああああ!! 失敗しましたわああああああああ!!」


 一方そのころ。

 クレア元王女は、貧困層の一角にて叫んでいた。


「ゴルゴナはなにをやっていますの!? ムキィィィィィィィィィィィ!!」


 みすぼらしい衣服に袖を通して、なけなしの金で雇った冒険者から情報を受け取る。そこには彼女の期待する結果は書かれておらず、むしろ墓穴を掘ったそれだった。結果として王城の警備はさらに頑強になり、勇者タケルの名声が上がる。


「こ、このままではいけませんわ! なんとかしませんと……!!」


 元王女は焦る。

 なんとかして王位継承争いに復帰し、すべてを手に入れねば、と。

 そのためならば、自分は悪魔にでも魂を売ることができるだろう。クレアはそう思い、最後の手段に手を染める決心をした。


「ここまできたら、本当に契約を結んでやりますわ!」


 自分のバックには、まだ魔王という最後の手段があるのだ。

 そう考えていた。しかし――。



『私が、お前のような敗北者に手を貸すとでも?』

「え…………?」



 その直後だ。

 脳内にそんな魔王の声が響き、腹部が熱くなった。



「なん、ですの?」



 ――なにかが、生まれようと、している。


 クレアはそう直感した。

 自分の中から、なにか得体の知れないものが出てくる、と。



『せめて最後に、悪魔の苗床として利用してやろうではないか』

「いや、いやあああああ! 誰か、助け――」



 しかし、彼女の叫びは誰にも届かない。

 元王女の断末魔。それは、悲しく空気の中に溶けていった。


 

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魔王『なんで負けたのか、考えておいて下さい』といわれたので、考え抜いた結果→ブサイク勇者の夢想魔法によるざまぁ無双(`・ω・´)シャキーン! あざね @sennami0406

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