第37話 それから。

 トモキは病院で検査を受け、確かに女性の体をしていることが確かめられた。手術の跡など一切なく、検査を求められた医師たちは彼女が元々男性だったなど全く信じようとしなかった。トモキはその診断結果を基に、性別の修正を役所に求め、事実確認を経て、「女性」と修正が認められた。

 こうしてトモキは、名実共に女性になり、名前も「川上友樹」から「川上友子(ともこ)」への変更が受理された。

 どういうことか? 医学的にトモキは「隠れ女性」であったと考えられた。遺伝子的に二つの性を持ち、成長と共に表層的な性が入れ替わる例は世界的に存在するが、短命で子どもの内に亡くなることが多く、これだけ成長してから性の入れ替わる例は他に報告がなく、トモキの場合遺伝子的にも完全な女性で、そもそもなんで男性の外的特徴が現れていたのか、謎だった。

 奇跡がオカルト的な方法で人為的に行われたことを知っているのは本人とヒロたちだけだ。

 川上友子は大学を休学し、アメリカの大学に留学し、そのまま日本の大学は退学した。



 それから5年後。

 大吉と沙織夫婦の元にエアメールで写真が届いた。

 ベッドの上で生まれたばかりの赤ん坊を満面の笑顔で抱いた友子の写真だ。

 その後ろには二人を抱くように両手を広げ、誇らしげにカメラを見つめる小柄でひげを生やした美麗な中年紳士が立っていた。

 男性になった水神由布子、現在の名は水神由樹(みずがみよしき)、

 友子の夫だった。



 終



  2011年8月〜10月作品

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赤いドア伝説 岳石祭人 @take-stone

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