あとがき

 

「私たちは親友のままでいるべきだった」と彼女は言った。


 それはきっと親友であれば、あの頃のように分かり合えたからかもしれない。物語の始まり、そして作中でも重要となるこの言葉には、そんな意味合いを込めた。


 さて、本書『21歳の葛藤』は直斗を中心として、高校一年生から大学三回生のおよそ六年間を描いた作品だ。直斗、まりえ、吉村、優花、明石、これらの登場人物たちの様々な思いが交錯し、物語が展開していく。その中で悩み迷い、時に誰かを深く傷付けてしまう。そんな彼らの姿に読者の皆さまはもどかしい思いを抱くはずだ。しかし、私は彼らを限りなくリアルに表現したかった。高校生の心は弱く、痛みを伴いながら何度も同じ間違いをしてしまう。どれほどの強い願いも、身勝手な感情が邪魔をする。だからこそ、夕陽に始まる空の情景描写を印象的に描く必要があった。本書の性質は勿論の事、直斗にとっても「空」は非常に重要なイメージだった。


 実はこの物語にはモデルが存在する。私の大学時代の友人が実際に経験した出来事が主に描かれている。それ故、元々は彼の為に書いた作品だった。しかし、執筆の段階で当初の予定より作品にボリュームが出てきた為、こうして今回ネット小説として公開する事となったのだ。


 何かを強く願いながら、それでもそれが叶わない事があると彼は知る。


 痛みを経験し、直斗は強くなれただろうか? これから先、大切な誰かを幸せに近付ける事が出来るだろうか?


 最終シーン以降の彼の物語は我々の想像、ひいては彼自身が自分の目でこれから確かめていくのだろう。その時はまた、続編として私が執筆を手掛けるのかもしれない。


 数ある作品の中から本書をお読み頂き、誠にありがとうございました。


 かつて何かを失った人たちへ届けたい。最後に一言、そんな祈りを込めて。



                           七瀬ユウキ

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21歳の葛藤。 @kyoka_yuki

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