今夜始まる明晰夢

kcat

ふわふわと、ゆらゆらと、あたたかな、きりのなかで。

「あ、ここ、夢のなか、なんだね。。」


ふとあたしの意識は、夢の中である事を認識した。こんな、暖かくほわほわした世界の中で、あたしはただ、あたしであることを、ただただ認識した。あたしは、である。あたしはだし、とりあえずあたしはで居よう。


は、ただ心地よい温泉を泳ぐように、ふわふわと、ゆらゆらと、ただただ流されていく。その先に何があるかわからない、ただ、ぷかぷか、ゆらゆら。


あたしは、の先に誰か居る気がした。ただ、遠く暖かい霧の向こうに、誰かが居るみたい。あたしにはただ、そんな気がした。


「ねぇ、そこのだれかさん、だーれ?」


ふっと溜まった何かを吐き出すように、それは霧の中に進んでいく。

そのだれかは、きっとなのかも知れない。じゃあ、いっか。で。


ねぇ、さん。あなたは、なぜここにいるの?

うん、あたしにもわかんないよ。だから、なの。


変なの、少し気持ちが緩んで、口の横から笑いがあふれてくる。


すごいよね、こんなが、こんなどこかわからない所で出会ってしまうなんて。でも、ここは暖かくて、心地よくて。ただただ、ぷかぷかと、ゆらゆらと。何も考えぬまま流れていく。


あたしね、なんだかふわっと生まれてきて・・・ふわふわと、ここにいるの。綿あめみたいに、ふわふわと生まれてきて、だんだん割り箸に集まっていって、少しずつになるの。


ねぇ、あなたは、どんな風にになったの?どこか似たようなだれかが分裂しちゃった?どこかに居ただれかさんが、さんになっちゃった?それとも、急に生まれちゃった?それとも、と同じように、ふわふわと生まれてきたのかな?

・・・にもわからないよ、あたしもなんだもん。でも、もし同じだったら、少し嬉しいかもしれない。


ふわふわと、ゆらゆらと、綿あめみたいな霧の中で、は無意識の会話を続ける。ただただ、ふわふわと、ゆらゆらと。


やがて、まるで出来たての綿あめのように甘い世界で、はサクセスストーリーを歩むのかな?あたしは、もうちょっとビターなのがいいかも知れない。甘い甘い綿あめは、やがてドロドロに溶けてしまうから。


そして暖かかったふわふわの綿あめは、だんだんドロドロになってしまって、は、絡まってしまうの。ずっとずっと離れられないくらい、甘くて暖かい霧は、あたし達を縛る糊になってしまった。


ねぇ、すこし、くるしいな。

せまくて、距離が近くて、何も感じられなくて、なんだか動けなくなっちゃった。。。


ねえ、さん。達、本当はこのドロドロを何とかして逃げた方がいいのかも知れないけど、これはこれで暖かいって思わない?それはそれで、一つのサクセスストーリーだと思うんだけど、どうだろう?


ああ、ちょうどいいや。この物語も終わりみたい。少しずつ、色んなモノが真っ青なお空の中に溶けていく。暖かで真っ青なお空の中に、溶けていく。溶けて、いく。


このお話も、もうすぐ終わりみたい。


ばいばい。

またね、さん。

またいつかどこかで、お話が紡げると、いいね。

今度は、ちゃんとお名前があって、世界があって・・・物語がある、次の夢の中で。。

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