新釈きのこたけのこ戦争

図書館出張所 

新釈きのこたけのこ戦争

 

「やっと見つけたぞ!」


と木野山は学校に響きわたらんとばかりに大声で叫んだ。


「よぉ、木野山どうしたんだよ。そんな顔して」


大声の先にいた武里は声に気づくと顔をにやりとさせ、わざと挑発するかのように言った。


「どうしたもこうしたもあるか。貴様が俺に掃除を押しつけたんだろ」


「僕はこう見えても忙しいんだよ。良いじゃん、暇なんだから」


「ふざけるな!そう言ってこの前もサボったろ」


「うるさいな。いいだろ別にそれくらい」


こんな争いが続いてはや一年、彼らの争いは学校の名物になっていた。      


 木野山と武里は所謂犬猿の仲というものである。

入学式でのちょっとしたいざこざから、二人は本当に些細なことで争いはじめるようになった。

テストの結果、体育祭での活躍から時にはバレンタインのチョコの数だ、早食いだ、大食いだなどのくだらないものまである。

そんな十月のある日二人がいつものように


「俺のほうが英語の点数が上だ」


「それだったら昨日の体育のテニスは僕の勝ちだ」


と争っていると、一枚のポスターが目に留まった。


「「生徒会役員選挙」」


そう言うとお互い、顔をにやつかせながら相手の方に向けた。


「丁度いい。どっちが生徒会長になれるか勝負だ。」


木野山が腕を組みながら高らかに言った。


「望むところだね。どっちが上かこれではっきりする」


こうして、二人の生徒会役員選挙が始まったのである。


 二人が生徒会長に立候補したことは瞬く間に学校中に知れ渡った。そもそも誰も生徒会等とめんどくさいものはやりたくない上に面白そうなものが見ることが出来るということで、他に誰も立候補する者はなく二人の決議投票となった。

 

 選挙期間中はお互い問題を起こしてはいけないと理解しているのか、特に問題を起こすことなく木野山は地道に一人一人に、武里は各部の部長に声を掛け力になってくれるように頼んだ。

そして投票日前日、最後の公開演説が行なわれるのである。


「見ろ!武里、この人の数が俺の人望だ。他人の力を借りるだけのやつとは格が違う。俺が生徒会長になったら貴様よりいい学園を作るだろう」


木野山は声高々に言った。


「人数だけ集めて、いい気になっているお前には言われたくないね。それに比べてこっちには、レスリング部の吉田に演劇部の松本がいるんだ。これがカリスマ性ってやつだよ。」


 案の定、低レベルな争いが始まってしまい、生徒たちは面白がっているものの、先生は顔を手で覆い呆れている。そんな状況になっているのにも気づかず、二人はどんどんヒートアップしていき、講演会そっちのけで、いつものようにギャーギャーと言い争いを始め、仕舞いには取っ組み合いを始めてしまった。

 

 そのため講演会場は一瞬にして、生徒は更に盛り上がり先生が止めに入るという地獄絵図と化していた。

それでも気が付かない二人の取っ組み合いは生徒指導の先生にとっ捕まり、生徒指導室に引っ張られ、こってりと絞られる事で幕を閉じた。


 当たり前のごとく二人の被選挙権は失効され選挙は再選挙となった。生徒会長には同学年である智世子がなった。


 こうして二人は、一晩にして学年を代表するバカから学校を代表するバカへとなったのである。


「貴様があんなこと言うからでこうなったのだろ。」


「お前が余計なことを言ったせいだろ」


当の二人は懲りることなく争いを続けており、この争いは卒業まで続いたのである。


 誰が言ったかわからないが二人の余りにも小さな争いはいつしか”きのこたけのこ戦争”と言われる様にになった。

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新釈きのこたけのこ戦争 図書館出張所  @38toshokan

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