全てが終わった後に… 下

 …そして翌日……。


 目が覚めたジェンスは、もっさりと起き上がり辺りを見渡した。

 辺りは明るくなり始めている時間で、ひっそりとしており、隣のベッドではバネッサが眠っていて、その寝顔に鼻の下を伸ばしていると、その向こうでシスティナが寝返り、胸元をさらけ出す様子に目を見開いた時に、背後からアサトの動く音に我に返り、冷ややかな表情で振り返って、アサトの寝顔に眉間に皺を寄せたが、その向こうで、サーシャに抱き着いているレアがサーシャの胸を揉んでいるのに、小さく目を見開いた…と言うのは、いいとして…。


 その奥には、セラとチャ子が寝ており、窓際のベッドには……。


 「なんでぇ~帰ってきてるんぢゃねぇ~か…。ったく…どこに行ってたんだ?あいつら……」

 ベッドから降りるとズボンを履いて服に袖を通しながら、アサトのベッドを通り過ぎ、胸を揉んでいるレアの手を、しばらく凝視して…からの…、セラにチャ子…そして……。

 「なにか面白いもんでも見つけたか?貧乳姫らが……」

 吐き捨てるように言葉にしてから服を着て、振り返りベッドまで行くと、ロングソードを手にして病室を後にした。


 廊下を進んだ先で、一度、上の様子を伺い、音もたてずに階段を降りると…下の階から話し声が聞こえてくる。

 リュッコが話している…。

 「ジェンスさん…カルファさんは、まだ…」

 「いいって。おれちょっと走って来るから…」

 「走るって…。先生は怒っていますし…わたしも…あっ、ジェンスさん…じぇんすさ~ん…」

 その声を聞いていたケイティは、一緒に横になっているライザの背中に体を押し付けると、結んでいた指に力を入れ、ライザもジェンスの声を聞きながら明け始めたカーテンの色を黙って見ていた……。


 その日は…。

 ケイティとライザは診療所から朝早く出て、夜遅くに帰って来た。

 運動に出た事でカルファに怒られたジェンスが、八つ当たりをしながらケイティらに、何処に行っていたのかを問いただしており、彼女らは笑みを見せながら話しをはぐらかしている姿を見ていたアリッサとクレアは、複雑な気持ちで見ており、サーシャはチームの事を心配していた。


 そして…、その翌日である。


 「てぇ~へんだ!てぇ~へんだぁぁぁぁぁぁ」

 「あっ…ジェンスさん……早いですね……」

 今日から運動を許可されたと言うか、もう止めないと言われたジェンスが、朝のランニングに出掛けたのは30分ほど前であり、そのジェンスの早い帰りにリュッコが声にしていた。


 「てぇ~へんなんだよ!!」

 叫んだジェンスが慌ただしく階段を駆け上がり、病室に入って来ると大きな声で叫んだ…。


 「おっきろぉぉぉぉ!大変だぁぁぁぁぁ」

 その言葉に目を覚ましたアサトらは、目をこすりりながらジェンスを見る。


 「どうしたのジェンスさん?」とバネッサ。

 「そうよ…朝も早いのに…」とミーシャが体を起こす。

 「おはようございます……、御飯の用意ですね…」

 壁側に寝ていたシスティナが目を覚まし、大きく背伸びを見せると、張り出した胸に目を見開いたジェンスは首を横に何度も振ってから、視線をアサトへと向け、その隣の…上半身を起こしているサーシャの服の中に手を入れて、乳首を触っている…ように見えるレアを見てから…股間を押さえて振り返り、何度か深呼吸をさせてから…セラとチャ子…、その向こうに寝ていたケイティらへと視線を送った。


 「ジェンス…どうした?」

 アサトの言葉に進み出したジェンスは、窓際のベッドに立った。

 「おぃ…にやけた奴が、死んでたぞ!!」

 「え?」

 ジェンスの言葉に声を上げたケイティ。

 「どうして…、え?」

 隣のライザが訊く。


 「たぶん、人間至上主義?で被害にあった者らがやったんじゃないか…って話だ。あいつらが黒幕…ってなんでわかったんだろう…。まぁ~いいか…。んで…俺がランニングしていたら、街の奴らがどっかに向かって進んで…。そんで…後をついて行ったら、海があって、船があって…網が…」

 「漁港ね…」

 ジェンスの言葉にサーシャが付け足し、レアの手を服から外すとベッドから立ち上がった。


 「…」

 胸を見ているジェンス…。


 …なんか、胸にぽちっとしたモノが……。


 「こらぁ!色欲魔!!早く教えろ!!」

 ケイティの怒鳴り声に我に返ったジェンスは、ケイティを見た。

 「そう…そこにスッポンポンで、手と足の指のない…。いや…チンコも無かったな…。」

 「チンコ?」

 セラが首を傾げ、そのセラに自分の股間へと指をさしたジェンス。

 「これがチンコ!!」


 「っちぇぇぇぇぇぇぇぇすとぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 お尻をなでながら話しを進めたジェンス。

 「レア!良かったね。誰かがかあさんの仇を討ったみたいだね!!」

 「そう、良かったねレア!!」

 ケイティとライザが、ベッドで寝ているレアへと近づいて強く抱きしめた。


 「仇?」

 「そう…」

 「そうだよ…もうあの男はいない…居なくなった…居なくなったから…生きて行こうね。全部忘れて…。お兄ちゃんを捜そう…」

 涙を流しながら抱きしめているケイティとライザの姿を、首を傾げて見ているジェンスと、小さく笑みを見せて見ているアサト。

 システィナは着替えを終えて病室を後にし始め、病室の入り口では、アリッサとクレアが二人の行動を見ており、事の成り行きを聞いていたサーシャは、複雑な表情で一同を見渡していた。


 朝食を終え、アサトはクラウトの魔法とカルファの診察を受けてから、階段を登ったり、降りたりの訓練をしている。

 ケイティとライザ、セラとチャ子にレアは、診療所の前で自転車に乗って遊んでいるようであり、その声が2階の病室にも聞こえてきていた。


 穏やかな午前中が過ぎ、昼食をとり、再び運動を始めたアサト。

 階段を登り、降り…。

 クラウトの魔法と診療を受け…、陽ざしが冷たくなったのが感じられた夕方前に、セナスティ次期女王が、ビッグベアを伴ってアサトの見舞に現れた。


 「女王が出て歩いていいんですか?」

 アサトの問いに笑みを見せて、病室の入り口に立つビッグベアへと視線を送った。

 「ベアが傍にいるだけで、誰も近づかないわ…。ケガの具合はどう?あれから忙しくて、見舞にも顔を出せなかった事をまずは謝らないとね…」

 頬を赤くしたセナスティは小さく頭を下げた。


 「そんな…。僕らはたまたまそこにいただけですから…それに…。女王は、僕らとは違いますよ。こうして来ていただいただけでも、なんか光栄です」

 顔を上げたセナスティ。

 「あなた達がいなければ、私は…」

 「よしてください…。ほんとたまたまですよ。ただ手伝っただけですから…」

 「そんなぁ~~」

 「ところで…」

 恐縮しているセナスティの傍で、クラウトがメガネのブリッジを上げて言葉にし、その言葉に見上げたアサト。


 「今日は、女王をお呼びしたのは私達で、アサトにも報告をしなければならない事がある。そして…、どうするかを決めてもらいたいと…」

 「え?」

 小さく驚いたアサト。


 「報告に決める?…ですか?」

 アサトの言葉に小さく頷いたクラウトは、一度間を置いてから話を始めた。

 「今日、漁港で上がったクレミアとドミニクの遺体の件だ…」

 「え?…あれって…」

 「お兄様と、ケイティさん、そして…」

 「ライザが殺した……」

 セナスティの言葉にクレアが付け加え、順に視線を送ったアサトは、アリッサへと視線を移すと、表情を険しくしており、その表情に……。


 「え?」

 小さく言葉を漏らした……。

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