ケイティ・ライザ・ロイドの誓い

 「アル…」

 ライザの言葉に視線を向けた。

 「…ッチ。俺が聞いてなかったら…。丸見えじゃぇ~か…バカ…。とにかく…おまえも、責任を持って生きるんだ。奪っていい命は無い事を…。」

 アルベルトの言葉に小さく俯いたライザの隣で、ケイティが外套を羽織り、その様子を感じてからライザも外套を羽織ってフードを目深に被った。


 「…いいか?」

 小さく頷くケイティとライザの瞳を瞳を見たアルベルト。


 「ここで見守っていてやる。その外套と見守る行動が、今、俺が出来る最大の教えだ…」

 その言葉に小さく頷いたケイティ。

 そして…。


 「ありがとう…」


 ケイティの言葉に振り返ったアルベルト。

 「悪いな摂政。今できる俺の修行は終わりだ…、聞いてたと思うが、こいつらの修行の成果を見届けさせてもらう…」

 アルベルトの言葉に小さく顎を引いたロイドは、一同を見てから進み出した。

 拓けた場所についたジュディスは松明を置き、うっすらと辺りを照らし出した光の中を崖方面にクレミアとドミニクを立たせ、その前にロイドが立ち、傍にはフードの奥からケイティとライザが顎を引いて睨んでいる。


 「…うご…うごうが……」

 クレミアが何かを言いたいのであろう、しきりに猿轡をされている口を動かしている様子を見ていたロイドが合図をして、両名の猿轡を外させると、たたみかけるようにクレミアが言葉にした。


 「おいおい、どう言う事だ?あの男が言っていたのは…俺を殺そうとしているように聞こえたぞ!!解放するんじゃないのか?」

 「あぁ~開放するさ…。そこには…たぶん永遠の時間が流れている…。イミテウス様もおっしゃていただろう…死の向こうには永遠の生が待っていると…」

 クラウディスが言葉にすると、小さく振り返ったクレミア。

 その姿にケイティが前に出た。

 その様子に視線を戻すクレミアの瞳に映ったケイティは、いきなりクレミアの膝裏を蹴り上げ、突拍子もない動きに四つん這いになったクレミアは、手を地面についた瞬間に手を踏みつけられ、広がっている掌にある細い小指目掛けて短剣を突き立ったのが見えた瞬間。


 「うっぎゃぁ~~~」

 悲鳴が上がるが、その声は波にかき消されている。


 「あ…ああ…」

 ケイティは薬指、中指…そして、勢いを付けながらクレミアの手の指をすべて切り落とし、その痛さに悲鳴を上げ転げまわるクレミアを見下ろしており、その光景をアルベルトが壁に背を預けながら目を細めて見ていた。


 「ライ!靴を脱がせて!!」

 「あ…あぁ…なに…なにをするんだ!なにをぉぉぉぉぉ」

 ライベルがライザの言葉に足を取り押さえ、ケイティとジュディスがクレミアの靴を脱がし始め、左右の足を上下にジタバタさせながら抵抗をしていたクレミアだったが、時間を掛けずに靴を脱がされると、ライザが両足を跨ぐように腰を落として押さえつけ、予備に持っていた短剣を抜いた。


 「あぁ…なぁ~もういいだろう…痛いんだぞ!いた…ぎゃぁぁぁぁぁぁ…」

 クレミアの言葉を無視して、今度はライザがクレミアの足の指を切り落とし始め、ジタバタさせていた足は次第に硬直してまっすぐな状況になり、ライザが脚の指をすべて切り落とした頃には、仰向けになって涙を流しながら激しく息をしている姿になった。

 足と手からはとめどなく血が流れ、その血が地面に塊を作り出している。


 「…なぁ~…もう…いいだろう……。釈放してくれよ…。なんでこんなことするんだ?なんで…おれが何をしたんだ?」

 「確かに、これは、人間至上主義の者らがマモノに対する行為…。でも、あなた達が反逆しなければ、こんな事は無かったはず!!」

 「はず!!」

 立ち上がりながら話したライザの言葉を追ったケイティ。


 「あぁ~、だったらもういいだろう…俺は生きたいんだ…。逃がしてくれよ。いいだろう…こんな体じゃ…」

 話しているクレミアの姿を見下ろしていたライザが、何かに気付き、失禁している股間へと視線を送ると、大きくズボンをはだけさせた。

 そこには勃起状態のイチモツがヘソ方面へと向かって固くなっているのが見え、その光景にクレミアを睨んだ。


 「…あぁ~、それは違う…俺にも分からない…」

 「体が反応しているのさ…子孫を残そうと…」

 ライベルはクレミアの足から立ち上がると離れ、哀れな姿のクレミアを冷ややかな表情で見ていると、小さな声が聞こえて来た。


 「…切り取っちゃえ…」

 ジュディスである。

 その言葉に視線を移したケイティ。


 「…男はみな…それが一番…なら、切り取ってしまえばいい…。」

 目があったジュディスは言葉にすると小さく進み出し、ケイティの横でしゃがむと、無言でいきり立ったイチモツを掴んで起こさせ、ライザの持っていた短剣を奪い、一気にイチモツへと走らせた。


 「あっ…ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………はぁはぁはぁ…はぁはぁはぁ…」

 手にしたイチモツを持って立ち上がったライザは、出血している股間へと切り取ったイチモツを放り投げ、短剣をライザへと渡し、さっきまでいた場所に戻り腕組みをして、激しく息をしているクレミアを見た。

 ジュディスの行動を見ていたケイティとライザは、一度、顔を見合わせてからクレミアを見下ろした。


 「…ころ…して…くれ……」

 声が聞こえる。

 その声にライザが小さく動いて確かめると、小さく震えているクレミアの口から聞こえる…。

 「おね…がいだ……。ころ…し…てく…れ……。たえら…れない……」

 苦痛に歪んでいる表情を見たライザが、ケイティを見ると、その視線にライベルへと視線を向けた。


 「起こして……」

 ケイティの言葉にライベルがクレミアの上半身を起こすが、すでにクレミアの頭を支えるだけの力が無い首のせいで、項垂れている状態であり、口から涎が垂れ、鼻水や涙が混じった、ねっとりとした液体が糸を引いて血に染まっている股間辺りに落ちた。

 その状況を見たライザが、クレミアを挟んでケイティの向かいにしゃがみ、ケイティは短剣を顔へと近づけライベルを見上げた。


 「あげて……」

 その言葉に、クレミアの顔を上げて首をさらけ出す状況を作り、ケイティはクレミアの顎下に短剣を持って来ると、その手にライザが手を添えて2人は見合った。


 「…」

 「…」

 ライザの言葉にケイティが付け加え、その後方からも声が聞こえた……。


 「そうだ…だ…。憎しみや復讐心で…殺すのは……」

 ロイドである。

 その言葉にジュディス、クラウディス、ライベルも言葉にする…。

 「今回だけ……」


 「ころ…して…くれ、ころ……」

 小さく口ずさんでいるクレミアの顎下から、ゆっくりと短剣を突き上げ、肉を切る感覚がゆっくり柄から伝わり、その感覚に何故か涙が溢れ出したケイティは、目を閉じて手に力を入れ始めると、ケイティの動きを感じながら目を閉じ、唇を噛みしめたライザも手に力を入れた。

 すんなり入って行く短剣の刃が、半分以上入ったところで、ガフッという、空気の抜けたような音がクレミアの口から発されると同時に、目を開けて見たケイティには、口ら大量の涎を含んだ血を流し、目を大きく広げ天を仰いでいるクレミアの表情が映り、ライザも同じ光景を見る…。


 そして…。


 「今回だけ…」

 「うん…」

 ライザの言葉に小さく頷くケイティの姿がそこにあり、大きく息を吐きだしたアルベルトは小さく俯いていた……。

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