3人の思いが交差した時… 下

 「え?」

 「え?じゃない!とにかく…ついて来いエロ摂政!!」

 歩み出すケイティの後を続くようにライザも動き出した。


 ケイティがロイドの前に来ると、冷ややかな表情で見上げてから腕組みをして顎を小さく横に振り、ダイニングを後にし、その後ろにライザ、そして、首を傾げながらロイドが続いた。


 「ケイティ!なにを…」

 「アリッチは黙っていて。このエロ摂政。ちょっとシバイてくるから!!」

 「シバくって…」

 心配そうな表情で言葉にしたサーシャが振り返りアリッサを見ると、アリッサも小さく首を傾げて見せ、クレアもダイニングから消えた3人の姿を見てからアリッサへと視線を移した。



 西門入り口近くの路地に着いた3人。

 「人目が無い所で、次期摂政をシバクか…。度胸あるね!!」

 最後方を歩いているロイドが言葉を出すと、辺りを見渡したケイティが、細い路地に入り、ロイドの背中を押して路地に入れたライザが、最後に辺りを見渡してから路地に入った。


 薄暗い路地は、40メートルほどあるようで、細い路地の真ん中あたりで立ち止まったケイティは踵を返したように振り返り、その姿にロイドが立ち止まり、頭を掻き乱し始めた。

 「声を…」

 「あんた…私達を城に招待して!!」

 「え?」

 声を上げるぞ!!と言おうと思ったロイドが目を見開いた。


 「ケイティ。それじゃあからさまじゃない!!」

 「じゃ何て言えばいいの?連れて行って!!お城がみたいのぉ~」

 尻を振り、ブリブリした状態で言葉を言った後に、腰に手を当ててライザを見たケイティ。

 「…って言えばいいの?それこそあからさまじゃない!!」

 「確かに……」

 ケイティの言葉に納得したライザ。

 それもそうである。

 事あるごとに喧嘩を買っているケイティが、今頃ブリブリしても何かの魂胆があるような感じである。

 なら……。


 「私達を城に」

 「おい、待て待て…。なんで城に行きたいんだ?」

 その言葉に顔を見合わせるライザとケイティ。

 しばらくして、声を発したのはケイティである。


 「いい…。ロイド。あんたに頼みがある」

 「頼み?」

 「うん…私達はクレミアを殺したい!!」

 「な…」

 ケイティの言葉に声をあげたロイド。


 「もしだめなら…。ここで止めて!!」

 ライザが声を上げ、振り返りライザを見たロイド。

 「でも…。止められても、私達は必ず、あいつを殺す!!」

 ケイティの言葉に視線をケイティに向けたロイド。


 「それでも止めるなら、また…やる計画を練る。女王が恩赦を与えたら…。確実に殺すまで、わたした…」

 「いや…、待て待て…」

 ライザの言葉に視線をライザに向けたロイドが、二人に向かって指を立てて制止をさせた。


 「お前たち…。ふぅ~~」

 小さく言葉を発した後に深呼吸をしながら、路地にある建物の壁に背中を預けたロイド。

 「とにかく俺の正面で話せ!前後ろじゃ、首が疲れる」

 その言葉に顔を見合わせたケイティとライザは、ロイドの前に並んでたった。


 「クレミアを殺したいの!!」

 「クレミアだけか?」

 ケイティの言葉にロイドが返すと、一度顔を見合わせた二人は、ロイドに向かって大きく頷いて見せた。


 「他にはいないんだな…」

 「うん…。」

 しっかりとした視線で見つめたケイティを見てからライザを見たロイドの視線に、ライザも小さく頷いており、二人の表情を見てからしばらく考えてから重いため息をついた。


 「実際、呑めない事だと言う事は分かっているんだな」

 「…」

 ロイドの言葉に口を噤んだ2人。


 「…あいつは…。レアの母さんを…」

 ケイティの言葉に視線を向けたロイド。

 「レア?」

 「居たでしょ、ため池でみんなと会った時に、小さなトラと人間の合いの子…」

 ライザの言葉に小さく考えたロイド。

 「…そう言えば、お前が、そんなのどうでもいいって言った時に、そばにいたような気がする…」

 「うん…。カギエナで、クレミアが率いる黒いモノらと戦った時に、あの子にかあさんを助けて欲しいって言われて…」

 「殺されたのか?…それで…」

 ライザの説明にロイドが訊き返した言葉をケイティが遮った。

 「殺されただけじゃないんだ!!」

 その言葉に目を見開いたロイド。

 ケイティの表情は憎しみに浮かんでおり、身体の奥にある憎悪が表情に出てきている感じがしていた。


 「だけじゃないって…」

 「彼女のかあさんは…。あのクレミアに犯され…そして…」

 「犯された…その子も見ていたのか?」

 ライザの説明に訊き返したロイドへ小さく首を振ったケイティ。

 「…それだけじゃない…。レアの前で、おかあさんの首を刎ね…そして、笑った…。あいつはマモノだ…。生かして…」


 「待て」

 ケイティの言葉を遮ったロイド。

 「犯している所を見せて首を刎ねた…。それで笑ったって…」

 「だから…。レアの事を考えると……」

 握り拳を造り、項垂れてたケイティの後頭部を見たロイドはしばらく考えた。


 …同じだ、いや、形はどうであれ……。


 「だから、わた…」

 「分った」

 「え?」

 ケイティが声を上げた時に、ロイドが承諾の言葉を発し、驚いた表情でロイドを見上げた2人。


 「わかった?」

 「あぁ…。分かった。お前らの憤りが…。いいだろう、ただし、条件がある…」

 「条件?」

 ロイドの言葉に消したライザを見て、小さく頷くロイド。


 「俺も仲間に入れろ…」


 「え?」

 「なんで?」

 驚きの声をあげたライザの言葉に、ケイティの言葉が後を追った。


 「…殺すのは、2人だ」

 「2人?」

 「誰?」

 ライザの問いに続いて、ケイティの問いに小さく息を呑んだロイド。


 「お前たちはクレミア、俺は…ドミニクだ。」

 「ドミニク?」

 ロイドの言葉に首を傾げながら言葉にした2人。


 「…セナスティにも教えたが、そいつは…」

 「もしかして、あの階段を逃げていた、見るからに弱そうな男?」

 ケイティの言葉に小さく考えたロイドは、北西の塔を駆け下りて来たドミニクを見た時に、後ろから現れたケイティとライザの表情を思い出し、その後に起きた、アサトのケガの事も一緒に思い出して小さく頷いた。


 「そうだ。あの時の男だ」

 「そうなんだ…」

 「なんか、わけわからなかったけど、驚いて逃げていたもんね…。なにこの人って思っていた…」

 ライザの言葉に、腕組みをして首を傾げながら言葉にしたケイティの姿がある。


 「…セナスティの母親も犯されたんだ」

 「え?あの男に?」

 ケイティの言葉に首を横に振ったロイド。


 「いや…。国王軍兵士だ…。」

 「国王軍兵士なら関係ないでしょ!…どうして殺したいの?」

 ライザが訊く。

 「国王軍兵士は、王妃の護衛役だったんだが、ドミニクの域がかかった者ららしくて…おれが到着した時には、もうボロボロだったんだ…。そして…。そんな自分をセナスティらに見せたくないと、自ら……」

 小さく項垂れ、握り拳を造ったロイドの姿を見たケイティは、握り拳を優しく握ると小さく持ち上げ、その動きに視線をケイティへと持って来たロイド。


 「…あんたの痛み…わかった。なら…一緒にやろう!!」

 その言葉に小さく頷くロイドの姿があり、その3人を路地から見ている影があった……。 

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