第2話 常識的な範囲の胸が好きです。
「ねぇ?ほだか。胸は好き?」
「男性の胸板が好きという遠回しなアピールですか?」
「おっと会話が成り立たないアホがひとり登場~。質問文に対し質問文で答えるとテスト0点なの知ってるよね?おマヌケさん」
「なんで君はそんな細かい?ネタ知ってるの?」
「一度言って見たかったんだ~♪使い方合ってるよね?それよりなんで答えてくれないの!」
「開口一番女性からそんな質問されたら誰だって現実を疑いたくなります」
「それで何故そんな質問を?そんなの男同士でやるのが基本では?」
「女の子だって普通にエッチな話くらいします。ほだかが女の子をどれくらい神聖視してるか知らないけど。それに……」
「私、実は男性向けの成年コミックや同人誌を漁るのが好きなの……って言わせないでよ恥ずかしい////」
「いや自らカミングアウトしたの君だからね。そして知りたくなかったよ、そんな秘密……」
「私がエロ本に嵌まり始めたのはそう……」
「やめて!聞きたくないから。そんな思春期女子の生々しい話……」
そう。それは私がまだ14歳になって一ヶ月も経って居なかったあくる朝。
朝といってもまだ日も出てない早朝。私の部屋の隣室からなにやら、物音が響いているではないか。
「ホントにやめてください。先の展開が手に取るようにわかるから……」
私は幼い頃から、隣室の書斎に入ることを固く両親から禁じられていた。両親から入ると確実に一家離散すると言われ、好奇心で覗こうものならきつく叱られた。
当時の私はまだ穢れを知らない純真無垢な硝子の華。
しかし保健体育で色々“勉強”する内しだいに色相は濁り、“それら”に対する興味関心は強まるばかり。
「嗚呼、その頃からすでに黒に染まってたんだ……」
隣室に何が有って、両親が何をしているのか。私はそれを知りながら、イケナイコトだと理性をフル回転させ、眼を反らしてきた。
しかしついにその日は来てしまった。私が少しオトナとなる日。早朝まで繰り広げられるドッグファイトを少しの怯えを含んだ好奇心と共にそっと覗いた。
だけどそれは私の知る範疇を大きく逸脱して余りあるもので……。
彼らは大量のエロ本やエロゲ、“アイテム”に彩られたピンク色の空間で『SM緊○スカ○ロプレイ』に励んでいた。
「あああああ嗚呼あぁぁ____」
優しく笑顔の絶えない母は凶悪な笑みを浮かべながらレザー衣装のブーツで父のお尻を踏みしだき。
荘厳で口数の少ない父は歪んだ笑みでケダモノのような鳴き声を出しながら汚物を振り撒いていた。
それを見た私の瞳には、世界中を旅して、この世の果てを探しだした吟遊詩人のような不思議な輝きがあったという。:談・母
「それ以来私、ちょっとエロスについて勉強してて!」
「……」
「質問に戻るけど、ほだかはエロ同人誌とかで見られる非現実的な大きさの胸ってその……好き?///」
「……」
「ちょっとほだか。聞いてる?」
「……キョヨウリョウオーバー……メンタルケアユウセン……」
「……ジョウシキテキナハンイノムネガ、イイデス……」
「ほだか~、ほだか~」
ガラスの靴の行方 高丈敏 @hiro-5001
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