ガラスの靴の行方

高丈敏

第1話 印象

 放課後、密室、男女二人、何も起きない筈はなく……。


「課題全然進んでないじゃないですか。早くしてくださいよ。牧野さん」

「だって全然わからないんだもん。早くやれって言われても無理ー」

「そこでどや顔されても……」

「いやいや、ほだかは私と結構一緒にいるのに私のバカさ加減をわかってないよ。家庭教師失格だよ?」

「それ自分で言ってて悲しくならないんですか?」


「俺も生徒会があるので速めにお願いしますよ」

「そーだ。息抜きも兼ねてスマホ弄ろー」

「人の話聴いてた!? もういいです。二度と教えない」

「あー待って、神様、仏様、ほだか様ー。ほんの冗談じゃん。本気にしないでよー」

「その間延びした言い方がやる気を削いで怒りを増長させてるんだ。スマホ没収されたくなければ、本気出しなさい」


 ーこれはちょっと振り回しすぎたかな?怒られる前にちゃんとした方がいい?でもでも、もう少しほだかのキリっとした顔見てたいし……だけど顔見つめすぎて課題が頭に入って来ないのも事実なんだよなあ……。


 ーあれ?なんでか急に真面目な顔で考え始めたぞ。これは良い兆候なのでは?次の試験は赤点回避できるだろう。牧野さんはやればできるんだから、毎回真面目に頑張ってほしい。でないとただでさえ忙しいのに家庭教師押し付けられるの俺だからね。


 ーうん。全然わからん。次の試験はカンペを用意するとして……。やっぱりほだかって、カッコいいよね。青い瞳とか筋肉質な体型とか……。なんかこう、見ててドキドキする。


 ーしかし牧野さんって見た目ギャルっぽいのに妙に大人びてるというかなんというか。金髪に華奢な体つき。悪くないとは思う。ツーサイドアップの今どきの美少女?ぽいかな。よくわからないけど。


 ー生徒会役員だからか普段の敬語とか無理して使ってる感あって拙いけどどこかかわいいし。私の勉強にもなんだかんだ言って付き合ってくれるし。及第点?


 ー見た目に反してそんなにキツさはない爽やかな印象。でもって割りと優しく、なんと、気遣いも出来るらしい。これ、クラスメイトの談。あと外人とのハーフ説とか……。その気遣い俺にも向けてくれないかな……。


 ーはあああぁぁぁほだかと……

 

 ー牧野さんと……


『『付き合ったら楽しそうだな……』』



「牧野さん、終わった?」

「もう少しだから、生徒会行っていいよ」

「そうですか。でも今から行ってもできることなさそうですし、最後まで付き合いますよ」

「むう!嫌み?まあでもありがとう」

「はいはい。19時までには帰りたいので速めにお願いします」






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