第43話 逢ひ見ての 後の心に くらぶれば…
『先生、もう、先生?』
『あぁ、久美ちゃんか?』
『原稿を取りに来ましたよぉ。』
『あぁ、そこの棚に入っているから、少し寝るねぇ…』
『ちょっと、ちょっと、久しぶりに原稿を取りに来てこれでは寂しいなぁ。』
『ごめんねぇ。昨日から、一睡もしていなくて、原稿を書いていたから、少しで良いから寝かせてもらって良いかなぁ。』
『解ったわぁ。印刷会社と本屋に行ってから、また来ますねぇ?ルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチは冷蔵庫に入れて起きます。あぁ、後、頼まれていた『ノルウェーの森〜村上 春樹』の小説とビートルズのノルウェーの森の曲が入ったCDを置いておきますねぇ。』
『あぁ、ごめんねぇ。ありがとう。ノルウェーの森を聞きたいから流して欲しいなぁ。』
『もう、しょうがないなぁ。それじゃ、流していきますねぇ。』
『ありがとう。』
『それにしても、村上春樹さんのノルウェーの森って、自殺した男性を彼氏にもった彼女とその友人とそれを追いかけた彼女の話だったよなぁ。かなり悩んでいるんだなぁ…先生は。悩むとすぐに本を読みたくなるから解るなぁ…』
『先生、先生、いつまで寝てるのですか?』
『あぁ、よく寝たけど、今何時かなぁ?』
『今は、18時ですよぉ。そうだったかぁ、すっかり眠ってしまったなぁ。もう、あれから、ずっと寝てたんですか?』
『そうなるなぁ。』
『あれ、ラタトゥイユが冷蔵庫に入っていますけど?』
『朝はなかったですよねぇ?』
『あぁ、あの後、宅急便が届いてねぇ。久しぶりに食べたくなって、フェスで知り合った韓流ドラマのサイトの友人に送ってもらったんだぁ。』
『えぇ?いつの間に?』
『なんだかんだで、仲良くなって3年ぐらいになるなぁ。』
『良かったら、食べる?』
『あぁ、美味しい。コンソメではなくてダシなんですねぇ?』
『でしょ?たまに食べたくなるでしょ?』
『でも、先生ならラタトゥイユなら作れると思うけど?』
『そっかなぁ。たまには、知り合いから料理を送ってもらいたいって思わない?』
『そりゃ、ありますけど…やっぱり嫌だなぁ。会ったりはしないんですか?』
『仲良くなれば、会う事もあるよぉ。』
『そうなんだぁ…』
『もしかして、妬いている?』
『そりゃそうですよぉ。』
『おいおい、韓流ドラマ好きなだけだって…』
『なら、私も知りたいですよぉ。どんな女性何ですか?』
『韓流ドラマと花が大好きな素敵な女性だよぉ。』
『へぇ、そうなんだぁ。なら、大丈夫だねぇ?ところで韓流ドラマでオススメはありますか?』
『そうだなぁ…『太陽の末裔』『ラブレイン』『パスタ』などがおすすめだなぁ。』
『えぇ、すごいですねぇ!すぐに、題名が出てくるって何本ぐらい見てます?』
『そうだなぁ、たぶん70本ぐらいは見ているなぁ。』
『もしかして、唖然としていないかい?』
『そりゃそうですよぉ。韓流ドラマ=おばちゃんの印象があるというかぁ…『冬のソナタ』のペ・ヨンジュンで一時的に流行ったぐらいかと…』
『おいおい、『冬のソナタ』は韓流ドラマ好きに取って名作だぞぉ。それに、四季シリーズは他にも『春のワルツ』『夏の香り』『秋の童話』があるんだよぉ。』
『へぇ、知らなかったなぁ。他には、おすすめってあるんですか?』
『そうだなぁ。『天国の階段』『ごめん 愛してる』は見て欲しいかなぁ?』
『なるほどねぇ。メモったから、今度、『太陽の末裔』から見てみるねぇ?』
『あぁ、ところでお腹はすかない?付き合って欲しいところがあるんだけど、時間は大丈夫?』
『はい、大丈夫ですけど…』
『じゃ、車取ってくるねぇ?』
『はい、待ってます。何処に連れて行くのかなぁ…たぶん、その辺の『ガスト』などだなぁ。お金もあんまり無さそうだしなぁ。』
『まぁ、一緒なら良いけどねぇ。』
『あぁ、お待たせ。』
『えぇ、ミスチルですねぇ?好きなんですか?』
『そうだねぇ。落ち着くから好きだなぁ。僕の中にある〜es(え~すぅ)。』
『早速、歌うかなぁ。嫌いじゃないけど…ところで、これから何処に行くんですか?』
『懐かしいところだなぁ。えぇ、まだあった?を感じて欲しい。』
『懐かしいところって、デニーズかなぁ。最近は見かけなくなったけどあるのかなぁ?』
『ほらぁ、着いたよぉ。』
『えぇ?まだあったんですか?『元祖 スパゲッティー 五右衛門だぁ!』懐かしい!』
『なぁ、懐かしいだろ?』
『確か、箸でスパゲッティーを食べるんですよねぇ?』
『そうそう、そうなんだ。』
『それにしても、私もよく利用したなぁ。あぁ、そうそう、高校時代は食べ放題のピザのお店があったなぁ?』
『シェーキーズ!』
『えぇ、もしかして、先生も行っていたんですか?私も、よく駅前で食べていましたよぉ。ポテトが美味しかったなぁ。』
『そうだねぇ。あぁ、そろそろ、頼もうかぁ?』
『そうですねぇ?あぁ、和風スパゲッティーだぁ。懐かしい。鰯スパゲッティーですって?』
『斬新だなぁ。』
『そうですねぇ。斬新ですねぇ?』
『では、先生は鰯スパゲッティーねぇ?』
『おい、ちょっと、待て!待てって!鰯スパゲッティーは次回にしてくれって。』
『もう、しょうがないなぁ、なら、次は鰯スパゲッティーに挑戦ですよぉ。』
『解った。解った。なら、次は挑戦するよぉ。』
『じゃ、来週ねぇ?』
『おい、ちょっと待て!待てって、来週は流石に早いから、来月には予定を入れておいて。』
『解ったわぁ。来月の15日、五右衛門スパ、鰯。』
『マジかぁ。メモするかぁ。』
『良いでしょ?逢いたくない?』
『そりゃ、逢いたいけど。』
『先生、カルボナーラねぇ?私は、和風スパゲッティを下さい。』
『えぇ、何でカルボナーラが食べたいって解った?』
『そりゃ、目の動きと笑顔よぉ。』
『解りやすいから、すぐに解ったわぁ。』
『先生は嘘がつけないわぁ。嘘がすぐばれるわぁ。久しぶりに食事って事は何か悩んでいない?』
『えぇ?』
『解るわよぉ。恋愛で悩んでいない?それも、他人の恋愛でしょ?』
『あぁ、そうなんだぁ。大和の事でなぁ。やっぱりなぁ。』
『過去に戻って、大和が雪と一緒になるのか?それともミナさんと一緒になるか?でしょ?』
『まぁ、そうなんだけど…』
『なるほどねぇ、深刻に悩むのは大和がミナさんと一緒になるって事ねぇ?違う?』
『えぇ、すごいなぁ。当たりだよぉ。』
『それが運命ならそうなるわぁ。もしかして、雪と大和が過去に先に帰る夢を見たんでしょ?』
『えぇ、するどいなぁ。』
『なら、みんなで帰れば変わるんじゃない?』
『なるほどなぁ。確かにそうすれば良いのかぁ。』
『あぁ、キタキタ。美味しい。ほらぁ、先生も冷めちゃうよぉ?』
『なるほどなぁ。北、北は美味しいねぇ。南、南はまずいのかなぁ?』
『はぁ?まずくはないわぁ。寧ろもっと美味しいわぁ。好きな人と一緒に入れば、美味しくなるわよぉ。方角の問題よりも、心が大事よぉ。とは言いながら、お腹が空いているマジックには叶わないわぁ。』
『確かになぁ。空腹というスパイスには叶わないなぁ。』
『あぁ、本当だぁ。美味しいなぁ。いつもは、何を食べても美味しいと感じなかったのに、今日は格別に美味しいなぁ。』
『でしょ?愛のスパイスを仕込みました。ほらぁ、先生、口もとが汚れているわよぉ?』
『えぇ、どこ、どこ?』
『ほらぁ、ここよぉ。たまには、おこちゃまな姿を見せてねぇ?』
『おい。たまにだけだぞぉ。甘えちゃうからなぁ。』
『はい、はい、たまには甘えて下さいねぇ?』
『いやぁ、美味しかったなぁ。あぁ、大丈夫だよぉ。ここは、俺が払うって。財布は閉まって。』
『えぇ、良いんですか?すいません、ごちそうさまです。』
『ポンポン。ほらぁ、行くぞぉ。』
『えぇ、さりげないなぁ。うれしいなぁ。』
『先生、方向が反対ですよぉ。』
『大丈夫だよぉ。原稿もさり気なく持って来ているから、駅に向かうねぇ?』
『あぁ、ありがとうございます。』
『ほらぁ、着いたぞぉ。原稿。』
『あぁ、ありがとうございます。ごちそうさまでした。』
『先生、どうした?』
『忘れものです。チュ。』
『あぁ、ありがとう。』
『いやぁ、うれしいなぁ。久しぶりに逢えたのもうれしいのに…最後はキスされるとはなぁ。今日はついているなぁ。』
『あれぇ、今日は何で、先生にキスしたのかなぁ?あぁ、さりげない気配りに撃たれたんだぁ。やっぱり、小さな気配りが出来る男性って素敵だなぁ。』
『いやぁ、ビックリしたなぁ。まさか、久美ちゃんからキスされるとは…なぁ。久しぶりにテンション上がるなぁ。さてぇ、この勢いで続きを書こうかなぁ。今日の百人一首は…』
『権中納言 敦忠〜逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり』
20××年
『もう、ひどいじゃないですか…先生に逢いたいと思って探しましたよぉ。『ごめん、探さないで欲しい』なんてメールするなんて!突然、理由も告げずにメールしてきて、ビックリしたじゃないのぉ。私達は付き合っているんだから心配かけないでよぉ。』
『あぁ…そうだったねぇ。ごめんごめん、執筆に集中したくて、2〜3日、旅行も兼ねて京都の嵐山で執筆してたんだよぉ。』
『なら、言って下さいよぉ。この3日間、先生に何かあったと思って、バイト先や友人に連絡したり、先生が出入りするところを必死になって探したんですから…今日、見つからなかったら…以前、教えてもらった場所に1人で行って過去に戻るか?ここで、死んだ方がましだとまで考えたんですよぉ。生きていて良かった。』
『おいおい、大げさだなぁ。大丈夫だよぉ。死なないから。』
『あぁ、ひどいなぁ。』
『逢ひ見ての 後の心に くらぶれば 昔はものを 思はざりけり』だなぁ…』
『ちょっと、もう。私の心まで読んで恥ずかしいじゃないのぉ。』
『でも、ありがとうなぁ。』
『えぇ、マジかぁ。そこまで、想ってくれているのかぁ…未来は明るいけど…これからが不安だなぁ。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます