第41話 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり

『先生、こんにちは…準備は出来てますかぁ…』

『あぁ…まだだよぉ。今、起きたばかりで…』

『ちょっと!雪の事は心配じゃないですか?』

『あぁ…心配だけど…。ちょっと、シャワー浴びてくる。良かったら、一緒に入るかぁ…?』

『もう、馬鹿じゃないのぉ?早くして下さいよぉ…。あぁ…呆れるなぁ…。』


『あぁ…スッキリしたぁ。生き返るなぁ。』

『はい、はい、良かったですねぇ?』

『そりゃ、寝起きのコーヒーやミネラルウォーターのようにスイッチが入るからなぁ!』

『もしかしたら?これからルーティンがあるんですか?』

『あぁ…あるよぉ。』

『ちょっと、急いでいるんですけど…どのくらいかかるんですか?』

『そうだなぁ…1時間ほどだなぁ…。』

『ちょっと、そのままで良いでしょ?』

『まぁまぁ、そんなに焦るなぁ〜って。髭をそって、洗顔をして、化粧水、乳液、ファンデーションをして、香水つけるから、ゆっくり待っていてなぁ…。』

『あぁ…もう!解りましたよぉ…。私よりも女子力高いなぁ…。でも、そこが好きなんだけど…。』

『あぁ…なんか言ったか?』

『いいえ、何も言ってませんよぉ。』

『そっか…あぁ…適当に座って、その辺にクッキーがあるから、食べてよぉ。あぁ…そう言えば、肌に良いみたいだから、ハーブ茶と合うから飲んでよぉ。あぁ…、ベッドで寝ていても大丈夫だぞぉ。』

『あぁ…ありがとうございます。それにしても、お金もないのに…困った人だなぁ…。大丈夫なのかしら?』

『えぇ?お金がないのにかぁ…。そうだなぁ、ないねぇ?でも、現実的な夢はあるから大丈夫じゃないかぁ…?夢だけでは食べていけないからなぁ。』

『あぁ…なら、良かったけど…。小説は諦めないで下さいよぉ…。』

『諦めは悪い方だから、趣味程度に連載はするさぁ。読者も無駄な力が入ってない方が良くないかぁ?』

『まぁ、それが先生の良いところかなぁ。』

『あぁ…、ありがとう。おぉ、良いねぇ。化粧がはえるなぁ…。カッコいいって罪だなぁ…。これで惚れない女はいないなぁ…。あぁ…でもなぁ…久美ちゃんがいるから困るなぁ…。なかなか、振り向かないからなぁ。』

『先生、聞こえてますよぉ。私は振り向いてますけど…相変わらず、一人ごとが大きいなぁ…クスゥ。』

『あぁ…そっか、そっか、なら、今すぐキスしてやるなぁ!』

『もう、最低!女心が解っていないのは嫌いになるぞぉ。』

『冗談だよぉ。準備が出来たから行こう。』

『あぁ…ところで、雪ちゃんはどうなんだぁ…?』

『あまりにも、衝撃的過ぎた記憶がよみがえって、かなりまいっているみたい。情緒不安定な感じで、大和が近くにいても、謝ってばかりで…『私が悪いのぉ…私がバンドが見たいって言わなければ良かった…ってそればかりらしいのぉ。』』

『そうなんだぁ…深刻だなぁ…。でもなぁ、辛いけど乗り越えなければ前にはすすめないからなぁ…』

『そうかなぁ…私は違うと思うなぁ…。忘れる事も時には大事だと思うなぁ…。もしも、さっきまで話をしていた人が目の前で無惨に殺されたら正気でいられる?』

『確かになぁ…、最後に話をしていたのが雪だからなぁ…。』

『でしょ?私達はその場にはいたけど少し距離があったからねぇ?』

『ところで、大和は大丈夫なのか?大和はかなり強気の性格だけど…案外、もろいからなぁ…』

『えぇ?そうなんだぁ…。雪を守るって、必死に慰めていたけど…』

『マジかぁ…あいつはそんなところは大人だなぁ…。』

『そりゃそうでしょ!雪が好きになったのがきっかけだけど…今はマジになっているからねぇ?』

『あぁ…雪の家に着いたぞぉ。ピンポン。』

『あらぁ、お久しぶりですねぇ?二人揃って。』

『えぇ?誰ですか?』

『いやだぁ、忘れたの?雪の母親の雪江ですよぉ!』

『えぇ?えぇ!久しぶりに逢ったからビックリしたなぁ。若くないですか?』

『そうかしら?ちょっと、整形したからかしら?なんて、冗談ですよぉ!お世辞でもありがとうねぇ。』

『あぁ…ところで、雪と大和は?』

『あぁ…今頃、愛しあっているんじゃないかなぁ?』

『そろそろ、戻ってくると思うけど…』

『あれぇ、瞬と久美も来たねぇ。良かった。』

『ちょっと、ちょっと、雪は元気じゃないのぉ。私に電話した時はぼろぼろ泣いていたじゃないのぉ。大和もひどいなぁ…、『雪が死ぬかも知れない!助けてって!』と言っていたじゃない!騙したのぉ?』

『わりぃ、そうでも言わなければ、瞬は来ないだろうって…久美に電話したんだぁ…。でも、すぐに来てもらうよりも、瞬にも少しだけ時間稼ぎをしてもらったんだぁ。』

『ちょっと、もしかして、私だけが知らなかったのぉ?』

『久美、ごめんねぇ?そうでも言わなければ、遠藤さんの家に行けなくて…私達だけでも良いかなぁ…っと思ったけど…みんなで逢いに行きたいなぁ…ってねぇ?』

『えぇ?という事は、これから、遠藤君の実家に行くんですか?』

『まぁ、そうなるなぁ…。というのも、たまたま、以前、桜木町でのライブの録画をツイタァ-に上げたファンがいたじゃん?それをたまたま、遠藤君の父親が見てさぁ…俺のバイト先を調べたらしくて、突然、電話が入ってなぁ…。それに葬式さえも俺達、出なかったかし、俺達も記憶から抹消していたから、ケジメをつけなきゃなぁ…ってねぇ?』

『そうだねぇ?』

『よし、決まったなぁ…。今から、逢いに行くから行こう!』

『あぁ…行こう。』


『先生、先生、もう、電車に乗ったら、何時もこうだなぁ。』

『しょうがないって、今では少し知名度がある作家さんだから、疲れているのさぁ…少し寝かせて上げよう。』


夢の中では…

『よし、今日も小説を書くぞぉ。久美ちゃんを幸せにしなきゃなぁ。よし、大丈夫!任せておけって!』

今日の百人一首は〜

『壬生忠見〜恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか』


20××年

『先生、先生、起きて下さいよぉ。そろそろ、着きますよぉ。』

『あぁ、すっかり寝てしまったねぇ?』

『疲れがたまっていますから、しょうがないですって。』

『そういえば、あれから3年が経過するなぁ。』

『そうですねぇ?遠藤君の父親が実は同級生事件からねぇ。』

『そうだねぇ?』

『それにしても、そろそろ私達も戻らなきゃねぇ?』

『そうだねぇ。大和と雪は去年の冬に見送ったから、そろそろ、遠藤君の父親から居場所を聞かなきゃね?』

『そうだねぇ。でも、少なからず未来を変えたから嫌な感じがするなぁ。』

『大丈夫だって!未来を変えるって大げさだなぁ。なぁ?先生?』

『げぇ?その声は神様?』

『そうだよぉ。お久しぶりです。あれから、5年になるかぁ?熱海事件からなぁ。シャッターカシャで過去に戻ってからなぁ。』

『そうですよぉ!あの後、大変だったんだからねぇ?』

『そっか?少しは夢から醒ましただけだから、現実に戻したに過ぎないって…あぁ、でも、大和と雪と出会った記憶は来年には消えるから過去に戻った大和と雪もこの世界に再び現れる時には記憶は消える事になる。』

『よく分からないなぁ?』

『もう、大人なら理解しろって。』

『先生は解った?』

『神様?こう言う事ですよねぇ?過去に戻ったら

、未来の記憶が存在しない。しかし、未来にいれば過去の記憶がある。』と言う事ですよねぇ?

『その通り。だから、この世界で再び出会った大和と雪は違った記憶がある事になる。』

『えぇ?もしかして、私達、4人が遠藤君の家に行った記憶は存在しなくなるのですか?』

『そうなるなぁ。という事は遠藤君の父親に会ったら…知らなかった真実を知る事になる。』

『そろそろ、着きますよぉ。遠藤君の家に?』

『あれぇ、遠藤君の家が消えている…』

『近所の人に聞いてみましょう?』

『そうだねぇ?』

『あの、すいませんが、ここに遠藤法律事務所があったと思うのですが…』

『あぁ、ありましたねぇ。確かにありましたが…今は海外を拠点にアメリカで法律事務所を開業してますよぉ。奥様が女優で有名な遠藤 雪さんでねぇ。

もちろん、あなた方もテレビを見て知ってますよねぇ?最近では、奥様の雪さんとともに、カルフォルニア州に住んでおりますよぉ。ハリウッド映画に奥様は出て今ではセレブの仲間入りみたいですよぉ。』

『えぇ!そんな事になっているとは…』

『確か、日本で女優で活躍していた頃だから、15年ぐらい前に『行列が出来る法律相談あるよねぇ?』で共演したのがきっかけみたいだったとか…』

『あぁ、聞いた事ありますねぇ。週刊誌に載っていましたねぇ!でも、大和さんと雪さんの噂があったのに…切ないなぁ。』

『というより、何でその事実を隠していたんだよぉ!』

『あれ、先生は知っていたと思っていましたよぉ。かなり前からダブル不倫で世間からはかなりバッシングされていたんですよぉ。それに、大和さんは昔、遠藤さんの奥様とは付き合っていたらしいですよぉ。雪さんと知り合う前かららしいですけど…』

『えぇ、そうなのかぁ。恋すてふ わが名はまだき 立ちにけりだなぁ…』


『はぁ。それはないだろう。』

『えぇ、どうしたんですか?夢でもみましたか。』

『(やばいなぁ。まずい事になりそうだぁ…)』


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