第40話 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は

『先生、こんにちは…』

『あぁ…こんにちは。』

『あれぇ、何か、元気ないなぁ…。』

『そりゃそうでしょ…だって、遠藤君が雪の家庭教師をしていた事実も知ってしまって、なおかつ、雪から泣きながら電話がかかってきたんだから…』

『あぁ…そうだったんだぁ。雪は大丈夫なのか?』

『大丈夫ではないわぁ。今は大和が雪の家に行って慰めているみたいだから…私も夕方には雪の家に行きますよぉ。先生は忙しいそうだから無理ですかねぇ?』

『おいおい、そんな人には見えるかい?』

『そんな事はないけど…最近、有名になってきてから大丈夫かなぁ…っと。』

『確かに、少しずつではあるけど知名度が上がってきているけど…まだ、私の顔を知っているのは少しだから大丈夫だよぉ。』

『なら、夕方に先生の家に寄りますねぇ?』

『あぁ…宜しくねぇ?あぁ…ところで…』

『はい、持ってきていますよぉ。パクチー大量とサラダチキンのサラダ、ハムとチーズのサンドイッチにルイボスティーです。』

『あぁ…ありがとう。』

『ところで、昨日、変な夢を見たんですよぉ。遠藤君が私に手紙を残した夢何ですよぉ…もしかしたら、同じ夢を見ました?』

『えぇ?何の事かなぁ…解らないなぁ…。先生、解りやすいなぁ…見ましたねぇ?そして、手紙はここねぇ!』

『あぁ…しまった。まさか、ばれるとはなぁ…。』

『先生は嘘が下手でしょ。なおかつ、決まったところに隠すでしょ?すぐにばれますよぉ。』

『あぁ…、ちょっと、ちょっと、読んだらだめだって…』

『大丈夫よぉ。夢の中で読んだから…すごい!内容も同じだなぁ…。やはり、怖い手紙だなぁ…。』

『おいおい、夢に出るぐらいに久美ちゃんを好きだったという思いを込めた手紙なのに…』

『そりゃ、当時にもらっていたら、感動して、涙を流したわぁ…でもねぇ?あれから、7年近く経過すれば大人になるわぁ。それに、夢の中で見た手紙と同じなら気持ちは冷めるでしょ?』

『確かになぁ…。良いところでCMが入る感動するテレビで放映する映画も感動出来なくなる感じかなぁ?』

『そうそう、そうよぉ。先生だけは解るだろうと思っていたけど…最高!』

『なるほどなぁ…。意外と女性は現実的なんだぁ?』

『そりゃそうよぉ。でもねぇ?男性が別れても好きな人を思い出す事は知っているし、素敵だと思うけど…寧ろ、それを引きずるのは嫌いだなぁ…。今、付き合っている女性をしっかりと見て欲しいなぁ…。もしかしたら、私の事が怖くなった?』

『いや、寧ろ、好感を得たよぉ。確かに、男性は引きずるなぁ…。でも、私もかなり引きずると思うなぁ…。それに、久美ちゃんならなおさらだなぁ…。』

『ダメ、ダメ、私でも。引きずっていたら、前には進めないわよぉ。時間は貴重なんだからねぇ!では、夕方に来ますねぇ?』

『あぁ…。』


『あぁ…。何を強がっていたのかなぁ…まさか、こんなに涙が止まらなくなるなんて…私も馬鹿だなぁ…。好きな人の前では、笑顔でいたいけど…泣いたらきっと迷惑がかかるから泣けなかったなぁ…。『笑顔が好き』って言ってたからなぁ。本音は私が亡くなっても一生引きずって欲しいが…本音なんだけど…。それでは、幸せになれないからなぁ。

でも、ずっと一緒にいたいけど…死ぬ時は一人だからなぁ…出来れば、私が先にいけたら最高だろうなぁ…。置いていかれたらきっと…辛いだろうなぁ…。

あれぇ、何を言っているのかしら…可笑しいなぁ…。あれ、何で泣いていたのかしら?あぁ…遠藤君の手紙かぁ!忘れていたなぁ…。まぁ、良いかぁ…。』


『まじかぁ。久美ちゃんは怖いなぁ…。引きずらないでって言うかなぁ…。とはいえ、きっとお互いにとっては良い事なのかもなぁ…。でも、今を大事にする事は現実的というよりも、寧ろ、好きになったら、とことんまで追い込むタイプだなぁ…。浮気をしたら、『早く、ここから飛び降りて…』って言いそうだなぁ…。『飛び降りたら。号泣しても、ほって置かれるだろうなぁ…。』あぁ…女性を好きになるのは命懸けなんだろうなぁ…。でもなぁ…そんな所も好きなんだよなぁ。あぁ…男って馬鹿だなぁ…。遠藤もこんな性格に気付かずになくなったのは傷つかずにすんで良かったかもなぁ。寧ろ、幸せだよぉ…。さてぇ、夕方まで時間があるなぁ。少し、仕事でもするかなぁ。』

今日の百人一首は…

『平 兼盛〜忍ぶれど 色に出でにけり

わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』


20××年

『先生、こんにちは?』

『あぁ…、こんにちは…』

『それにしても、私達と雪さんと大和さんが実は20年以上前に出逢っていて、なおかつ遠藤さんの父親とは同級生とはビックリしましたよねぇ?』

『そうだねぇ?それも、私達4人を探していたとは知らなかったなぁ…。』

『それにしても、タイムトラベラーは実際に存在するとはなぁ…。それが私達とは…』

『そうですねぇ…私も記憶はないですが…遠藤さんの自宅に行って、父親が膝から崩れて号泣するとはビックリしましたよねぇ?それに、写真におさまっていたのは紛れもなく私達でしたねぇ?』

『そうだねぇ?まさかの出来事だったみたいだねぇ?大和さんの車でドライブして、谷底に破損した車だけが残っていて、私達がいなくなったら…?1人だけが残ったら…きっと私も探すだろうなぁ…。』

『ですねぇ?もしかしたら、私達は運命に手繰り寄せられるように集まって、お互いに出逢うべきして出逢ったのかも知れないですねぇ?ということは私達4人はこの時代でやり残した事は終わったのかなぁ?』

『どうなのかなぁ…?』

『もしかしたら…変な事を考えていないですか?』

『えぇ?先生はすぐに顔に出るなぁ…。解りやすいなぁ…純粋ですねぇ?でも、遠藤さんの父親の話だと…昔の先生は今と違うらしいけど…』

『あぁ…そうみたいだねぇ?』

『どちらの先生も好きだけどなぁ…。』

『先生は私の事は?』

『どうなのかなぁ…遠藤君の父親の話だと…俺達は仲の良いテニスサークルの仲間だったみたいだからなぁ…。』

『でも、常にお互い意識はしていたみたいですけど…というより、付き合っていたでしょ?』

『そうだけど…』

『あぁ…もう、じれったいなぁ…。こういう時はこうだぁ!』

『えぇ?』

『少しは、ここで過ごしたいと思えた?先生は解りやすいなぁ…じゃあねぇ?おやすみ。』


『えぇ?突然、キスって…。』

『忍ぶれど 色に出でにけり…』


『あちゃ〜、また、眠ってしまったなぁ…。それにしても、夢にしてはリアルだなぁ…。しかし、俺達がタイムトラベラーって何だぁ!通りで思い出す事がかなりズレているとは思っだけどなぁ…それにしてもいったい…俺達が30年以上前から来ているとは…信じられないなぁ…

あぁ…今、何時だぁ?げぇ?もう、16時かぁ…そろそろ、来るなぁ…。』









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